大きな投資予定がある国内メーカー(半導体分野)
日本政府は2030年に向けて、国内半導体生産による合計売上高15兆円超を目指しています。2020年時点で約5兆円のところを3倍にまで伸ばす施策を講じ、国内各社に支援を行っています。具体的にどのような半導体メーカーが大きく動いているのか、ここでは半導体の製造を行うメーカーに絞って紹介していきます。
大規模投資を行う国内企業
大規模投資を行う予定の、次の半導体メーカーについて簡単に紹介していきます。
- ルネサスエレクトロニクス
- キオクシア
- マイクロンメモリジャパン
- ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング
ルネサスエレクトロニクス
「ルネサスエレクトロニクス」は三菱電機や日立製作所、そしてNECから分かれた会社が統合することで誕生した会社です。東京都に本社を置く半導体メーカーで、産業用や家電向け半導体、車載用半導体など幅広い製品群を持ち、SoCやMCUにも強みを持っています。持続可能な生産への取り組みに積極的であることも同社の特徴の1つで、エネルギー効率の向上に向けた開発が盛んです。
そして同社が今後取り組む大きな事業は、自動車の走行に関わるマイコンの生産能力強化です。477億円もの投資を行い、主要な向上が停止してしまった場合に備えて設備を導入する予定です。この投資に対して政府も最大159億円の補助を行う見込みです。昨今の半導体不足も、既存の工場が上手く稼働できなくなったことが関わっていますので、工場の生産能力を強化して一か所主力の向上に頼り切らないというのはリスクヘッジとして有効といえるでしょう。
キオクシア
「キオクシア」は、メモリ製造に強い半導体メーカーです。2019年に東芝から独立して設立されたという背景を持ち、研究開発に積極的なメーカーでもあります。個人向けにもSSDやマイクロSDメモリカード、USBフラッシュメモリなどを取り扱い、フラッシュメモリやSSDにおけるリーディングカンパニーとしても知られています。
同社は先端メモリ工場への設備投資、2,788億円もの投資を行います。また、この投資に対して政府も最大929億円もの補助をする見込みです。補助の対象になっているのはNAND型フラッシュメモリの生産拠点である三重県の四日市工場で稼働する設備です。3割ほどの補助が行われ、半導体サプライチェーンの強化、および半導体産業への貢献が期待されています。また、キオクシアグループは岩手でも半導体、3次元フラッシュメモリ等が生産できるよう、投資を行っています。既存の四日市工場に加え岩手県にも北上工場を立ち上げています。北上工場による生産能力の強化が期待されるだけでなく、新たな人材採用・活用が進むことも今後の半導体業界に貢献する取り組みとして注目されています。
マイクロンメモリジャパン
「マイクロンメモリジャパン」は半導体メモリの開発・設計、そして生産を行っている半導体メーカーです。広島に本社がありますが、アメリカの「マイクロンテクノロジ」の子会社でもあります。同社は広島工場に対し、総額で8,000億円もの投資計画があり、その一環として新工場に1,394億円が投資されます。なお、補助額はそのうち約464億円とされています。この工場はチップサイズの縮小化に対応した先端メモリ半導体、DRAMの生産量増加、国内への安定供給に貢献すると期待されています。
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング
「ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング」はソニーセミコンダクタソリューションズの子会社で、半導体の設計・開発、製造を行っているメーカーです。ソニーセミコンダクタソリューションズはスマホやデジカメ用のイメージセンサーに強みがあり、また、IoT製品など新たな市場への参画にも前向きな企業です。ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングはグループ内における半導体生産の役割を主に担っており、長崎や山形など、国内に複数の生産拠点を持っています。同社はさらに883億円もの投資を行い、大分や熊本、鹿児島、そして東北地方にも複数の拠点を設けます。
JASM
「JASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社)」の活動にも注目が集まっています。JASMは世界最大のファウンドリメーカー「TSMC」が出資をして立ち上げられた子会社で、熊本にJASMの工場が建設され、日本としても大きな生産力が獲得できると期待されています。投資規模は86億ドル(1兆2,000億円超)規模とされ、高まる需要への対応、半導体エコシステムへの貢献、そして日本国内での半導体人材の育成や活用に大きく影響を与える見込みです。新工場は2022年から建設が始まっていて、2024年内には生産を開始予定です。スケジュールも計画通りに進行しており、近々量産も始められる見込みです。
まとめ
ここでは半導体メーカーのうち大規模な投資を予定している企業を紹介しました。TSMCの出資を受けて立ち上げられた「JASM」は特に注目度が高く、同社による生産が始まることで国内の半導体業界にも影響が出てくるものと思われます。
他にも有力なメーカーに「デンソー」や「三菱電機」、「富士電機」などがありますし、政府や大手企業が出資して立ち上がった「ラピダス」にも関心が寄せられています。