半導体分野における近い未来(5年以内)における動向について
通信技術や情報処理技術、半導体技術が進化を続け、これらデジタル領域の発展は様々な観点から重要視されるようになっています。各半導体メーカーが独自に戦略を打ち立てて競争力を高めようと努めていますが、国策としても注目される半導体分野は国からの支援や政策も無視することはできません。そこで政府の目指すところ、政府が示す方針をチェックすることで、今後の半導体分野の動向を読み取ることも可能です。特に2030年にかけては具体的な戦略が示されています。ここで簡単にまとめますので参考にしていただければと思います。
今後の半導体産業が目指すところ
世界中で半導体に対するニーズが高まっていますが、日本企業が優位に立てている例はかなり限定的で、今後どのように活性化していくかが議論されています。 また、昨今は半導体不足が重大な問題になっていますので、2030年にかけては「日本国内で安定的に半導体の供給ができること」が大きな目標として掲げられています。具体的には、国内の半導体メーカーの合計売上高を、現在の「約5兆円」から「15兆円以上」にまでもっていくことが重視されています。
今後の発展が望まれる半導体分野
「先端ロジック半導体」「先端メモリ半導体」「産業用スペシャリティ半導体」「先端パッケージ」「製造装置・部素材」の5つの分野がピックアップされ、発展に向けた具体的な施策が打ち立てられています。
先端ロジック半導体 |
コンピュータやスマホなどのデジタル機器の核にあたる部分。微細化などにより演算速度や処理能力に寄与する。 |
・国内の製造拠点を整備 |
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先端メモリ半導体 |
記憶装置として使われる半導体。DRAMやNANDフラッシュなどさまざまな種類がある。 |
・アメリカとの連携で信頼性の高い設計製造拠点を整備する |
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産業用スペシャリティ半導体 |
自動車や産業機械等の産業用機器に使われる半導体。パワーデバイスやアナログICなどの種類がある。 |
・国内での連携促進でパワー半導体の生産基盤を強化する |
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先端パッケージ |
半導体チップを外部環境から保護し、他の部品と接続するためのもの・技術。 |
・開発拠点の設立 |
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製造装置・部素材 |
半導体製造に必要な機械や材料のこと。半導体の製造コストや歩留まりに寄与する。 |
・安定供給ができる体制を整える |
今後は「人材育成」「国際連携」「グリーン化」が活発になる
上記先端ロジック半導体や先端メモリ半導体など、数々の半導体分野を発展させていく上で横断的に取り組むべきことが「人材育成」や「国際連携」、そして「グリーン化」です。
どうやって半導体人材を育成するのか
人材育成については特に日本で深刻な問題となっています。半導体に力を入れようにも、優秀な人材が育たない、あるいは海外へ流出してしまっているという現状があります。そこで「地域単位での産学官連携」が今後進んでいくと予測されます。地域の実情に合わせることが重要ですので、産業界におけるニーズの実態を把握すること、企業がどのような人材やそれほどの人数を求めているのかをよく調査した上で取り組む必要があります。
また、「次世代半導体の設計」に強い人材の育成も注力すべき課題と考えられています。そこで学生の教育プログラムから整備し、設計人材を継続的に排出する仕組みが必要になっています。すでに始まっている取り組みとしては、東大における横断教育プログラムが挙げられます。特定の学生に対してのみ教育するのではなく、工学部に共通のプログラムとして実践されています。
グリーン化の重要性と取り組み内容
国際連携については技術力の研鑽や新たな研究開発のために重要なことであると長く言及されてきたことですが、グリーン化については最近議論が加熱してきました。これは、半導体技術・デジタル技術が進化することに伴って、必要電力が増大することに由来します。
半導体と環境問題は一般的なイメージとして直結しないかもしれませんが、消費電力が増えると脱炭素化に反してしまうのです。そこで半導体の性能向上とエネルギー効率の改善を両立しながら進化していくことが重視されるようになっています。そこでグリーン化との両立に向けては、①微細化、②高密度化、③高度実装、④高集積化、④システム等の最適化、⑤素材の進化が重要な取り組みとして掲げられています。
まとめ
半導体は社会の利便性を向上させるためだけでなく、日本の経済全体に関わる非常に重要な存在でもあります。半導体各分野における製造・開発拠点の設置や整備、人材獲得やグリーン化に向けた取り組みが盛んになっており、これからはよりその流れが進んでいくと思われます。具体的には、各地での教育体制が充実していくこと、生産拠点が増えて半導体の供給が安定していくこと、また、半導体メーカーの成長なども今後期待できるでしょう。