ムーアの法則とは?いつ破綻するのか、新たに提案された法則についても解説
これまで半導体業界の発展は「ムーアの法則」に依存してきました。しかしこの法則はいつまでも機能するものではありません。そこで、今後の業界の動向を把握するにはムーアの法則とその破綻について知っておくことが大事です。
一般の消費者にも影響を与え得るものですのでここでムーアの法則や、その破綻、破綻後の業界について予測されていることなどをまとめていきます。
ムーアの法則とは?
ムーアの法則とは、「半導体の集積率が1年半で2倍になる」という法則のことです。インテルを創業した者の一人、ゴードン・ムーアという人物が1965年に提唱しました。半世紀以上前に唱えられたものですが、今でも半導体業界では重要な経験則として捉えられています。
実際、この法則に沿う形で高集積化および低コスト化を遂げてきました。同法則に沿って、半導体製造装置から材料、その他関連サービスなども暗黙に予定調和を図ってきたという背景もあります。
集積率が2倍になることの意味
半導体における「集積率」とは、半導体ウエハの面積に対するトランジスタ素子の割合のことです。同じ面積上にできるだけ多くの素子が構成できればそれだけ高い集積率となります。そしてムーアの法則ではこの集積率が1年半で2倍になると示していますが、線形ではなく、加速的な進化を意味します。
起算点を100の数値で表現したとすれば、1年半後には200、さらにその1年半後には400、その後800、1600、3200といった形で増えていくことになります。もちろん半導体業界のみならずあらゆる業界は進化をしているのですが、その成長曲線の勾配が半導体業界では比較的急になっています。
集積率が増せば、「性能向上」「低コスト化」に繋がります。多くのトランジスタ素子が使えるようになることでCPU等の処理能力がアップしますし、同じ面積から作れる半導体の数が増えれば少ないコストで製造ができます。
ムーアの法則はビジネスへの影響も大きい
ムーアの法則がマーケティング戦略に与える影響も大きいです。例えばIT業界におけるビジネスの重要性効要因(KSF:Key Success Factor)もムーアの法則によって変化したとされています。過去のIT業界ではハードウェアが重要視されていたのですが、ムーアの法則に沿って進化を続ければコンピュータの性能が飛躍的にアップし、低価格化が加速することは容易に予想できることでした。
結果、企業はハードウェアの開発力を重視するようになりましたし、ハードに関してはおおむね予想に沿う形で進化を続けてきました。
ムーアの法則はいつか破綻する
半世紀以上、ムーアの法則は半導体産業を牽引してきましたが、近年は「そろそろ破綻する」と言われ続けています。こう言われながらも、様々なテクノロジーの実用化などが起こり延命を続けているのですが、いつかは確実に破綻するとされています。というのも、原子という最小単位は決まっているため、永遠に微細化を続けることは物理的に不可能だからです。
そこで、破綻するかどうかの議論ではなく、「いつ」破綻するのかというところが大事です。3次元化するなどして集積度を増すことも行われていますが、こちらもやはり強度的限界がやってくるため、より自由な発想によって発展を続けることが求められます。
ムーアの法則が破綻するとどうなる?
すべての企業がムーアの法則に依存したままだと、法則が破綻した後、社会全体で革新が止まることになります。そのため、特にハード寄りのビジネスや、旧来からあるビジネスには大きな変革が求められるようになります。最も打撃を受けるのは半導体設計の領域でしょう。これまで以上に設計技術者には独創性が問われるようになります。
また、この破綻は、今成長を続けているクラウドビジネスにも影響します。クラウドビジネスにおけるコスト要因は半導体の微細化にあまり依存していないのですが、まったく影響を受けないわけではありません。クラウド利用料の下げ止まりがやってきたり、クラウドコンピューティングにおける汎用サーバの性能向上が停滞したりします。
システム更新によって当たり前のように性能が向上する時代が終わり、クラウドビジネスにもやはり変革が求められるのです。
ムーアの法則に代わる新たな法則?
ムーアの法則が機能しなくなった後については、「エネルギー効率が加速的に伸びていくのではないか」「量子コンピュータの性能が加速的に伸びていくのではないか」などといくつかの説が唱えられています。
エネルギー効率倍増の法則について
世界中で脱炭素化の流れが進み、データセンターの省電力化など、半導体デバイスの電力効率が注目されるようになってきています。こうした流れもあり、台湾の半導体製造企業であるTSMCの会長は、集積回路のエネルギー効率が2年で倍増すると唱えています。
実際、これまでのGPUエネルギー効率を見てみると、新たなトランジスタ構造や新材料の導入によって、エネルギー効率を2年で倍増することに成功してきています。そこで、ムーアの法則が破綻した後は、この法則が新たな指標となって発展していくのではないかとも見られています。
量子版ムーアの法則について
量子コンピュータの性能が二重指数関数的に向上していくと予測した「ネーヴンの法則」というものもあります。二重指数関数的な増加は、これまでの増加の程度とは比べ物にならないほど大きなものです。4、16、256、65536といった形で増加していくことになります。量子コンピュータは非常にミクロな世界での現象、量子現象を活用したコンピュータであるため、最終的に微細化技術は量子コンピュータにたどり着くとされているのです。
ただ、量子コンピュータは一般的なコンピュータの延長線上に位置するものではありません。同じ原理で性能を向上させたものはスーパーコンピュータの方であり、将来的にも量子コンピュータがそれ以外のコンピュータを代替するのではなく、併用していくことになると考えられています。そういう意味ではムーアの法則ほど広く適用できるものではありませんが、汎用性ある量子コンピュータがスピーディに実用化されれば、それだけ早く社会も変わっていくことになるでしょう。
まとめ
ムーアの法則が破綻するタイミングはまだわかりませんが、その後は業界全体に変化が求められるでしょう。消費者一般にもその変化が感じ取れるかもしれません。
関連ページ:⇨半導体とは?どういったものか簡単に説明します
関連ページ:⇨世界の半導体メーカー企業ランキング10社を紹介!
関連ページ:⇨弊社の商品をご紹介