キヤノンアネルバについて|スパッタリング装置や真空技術に強いメーカーを紹介
半導体製造装置は日本が強みとしている分野でもあります。露光や成膜、エッチング、計測・検査など、製造装置市場にも多様な領域がありますが、その一端を支えているのが「キヤノンアネルバ」です。ここではスパッタリング装置や真空技術に強いキヤノンアネルバという企業について紹介をしていきます。
キヤノンアネルバの概要
「キヤノンアネルバ」は神奈川県に本社を置き、真空技術や成膜加工技術をベースとした製品開発・製造から販売まで行っている企業です。一般的にも良く知られている「キヤノン株式会社」が100%出資している株式会社でもあります。
キヤノンアネルバの基本情報 |
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会社名 |
キヤノンアネルバ株式会社 |
沿革 |
1967年:日電バリアン(株)として創立 1979年:日電アネルバ(株)に社名変更 1995年:日電アネルバエンジニアリング(株)を合併し、アネルバ(株)に社名変更 1997年:半導体製造装置「COSMOSシリーズ」を発売 2005年:キヤノンアネルバ(株)に社名変更 |
本社 |
神奈川県川崎市 |
資本金 |
18億円 |
売上高 |
259億円(2022年時点) |
主な事業内容
キヤノンアネルバの主な事業は3つに分けることができます。1つは「製造装置」です。①半導体デバイス製造装置(基板上に、トランジスタやメモリなどの配線を作る薄膜を形成するための成膜装置)や②ストレージデバイス製造装置(基板上に、磁気センサーや磁気ディスク、磁気ヘッドなどを作る薄膜を形成するための成膜装置)、③その他ディスクリート半導体(パワーデバイスやLEDなど)のための成膜装置などを作っています。
もう1つは真空技術を扱うための「コンポーネント」です。真空技術に欠かすことができない部品を作っており、例えば真空ポンプや真空計、バルブ、配管、X線源などを提供することで、各種装置や計測機器の機能性安定を支えています。
また、「保守サービス」もキヤノンアネルバの重要な事業領域の1つです。顧客とのコミュニケーションを通して、提供した装置や製品が機能を維持できるように保守サービスが提供されています。定期的なメンテナンスや修理、パーツの洗浄、装置の改造、オーバーホールまで行っています。
キヤノンアネルバはスパッタリング成膜に強みを持つ
キヤノンアネルバが提供する製造装置には「スパッタリング装置」や「ドライエッチング装置」があります。特に同社はスパッタリング装置に強みを持っており、世界的な市場規模から見ても同分野において大きな勢力の1つとして認識されています。成膜装置全体から見ればスパッタリングのほかCVD(化学気相成長:化学的な成膜方式のこと)やLPE(液相エピタキシー:溶液を接触させる成膜方式のこと)もあり、「AMAT」がトップの位置にあるといわれています。
AMATは特にCVDやスパッタリングの領域で大きなシェアを持っており、特にスパッタリングにおいては8割を超えるシェアを持っています。LPEにおいても3割近くのシェアを持ち、「ASM」に次いで大きな勢力となっています。スパッタリングに関してはAMATに次いで日本の「アルバック」が大きなシェアを持っており、次にキヤノンアネルバが位置しています。AMATなどのメーカーに比べるとシェアは小さいものの、それでもスパッタリングの世界市場において有力メーカーであることに違いはありません。
スパッタリングとその他の成膜方法について
成膜技術にも種類があり、それぞれに必要な装置も異なります。例えば代表的なものとしてスパッタリングのほかCVDやLPEなどもあります。
※CVD(Chemical Vapor Deposition)装置とは
化学気相成長法を用いた成膜装置。基板上に薄膜の材料となるガスを供給して、化学反応により基板表面へ成膜していく。熱により化学反応を促進する熱CVD、プラズマで反応性を高めるプラズマCVDなどがある。
※LPE(Liquid Phase Epitaxy)装置とは
エピタキシャル成長法を用いた成膜装置。基板上に材料を堆積させていくことで膜を形成していく。LPEは材料をいったん溶媒に溶かして基板上に乗せる。その後溶液の温度を下げることで結晶を成長させていく。
なおスパッタリングは、薄膜の材料になるターゲットに高エネルギーイオン(電子やアルゴン)を衝突させて表面の分子をはじき出し、その分子との化学反応によって薄膜を作っていくという手法になります。
キヤノンアネルバの取扱い製品
上述の通り同社はスパッタリング装置が主力製品ですが、他にもさまざまな製品の取扱いがあります。簡単にその種類と内容を紹介します。
- ドライエッチング装置
エッチング装置は、薄膜を削って回路パターンを転写する工程。ドライエッチングでは異方性があり高精度で薄膜を削ることができる。- 原子拡散接合装置
ウエハや基材を原子レベルで接合するための装置。- 真空ポンプ
成膜や接合において必要となる真空環境を作り出すための、空気を抜く装置。- 真空計
真空度合いを測定するための装置。- 四重極型質量分析計
イオンや分子の質量を分析・測定する質量分析計の一種で、4本の電極を使いチャンバー内に残留したガスなどを調べる。- リークディテクタ
真空容器からの漏れを検出するための装置。水素やヘリウムなどを使用する。- X線源
高解像度・高速撮影をするための、X線を発生させる装置。
まとめ
キヤノンアネルバは、半導体製造装置市場においてスパッタリング装置で存在感を示しています。また、高度な真空技術に強みを持っている点でも特徴的な企業といえるでしょう。