近年の半導体産業に関する各国政府やメーカーの動向を紹介
多くの業界でグローバル展開が進んでいます。半導体に関しても同様で、今後発展していくためには国内にのみ着目するのではなく、世界の状況を把握しておくことも大切です。そこで以下では各国・各地域の、半導体産業の動向について、経済産業省から公表されている資料等を基に紹介していきます。
各国の半導体産業政策の内容
まずは、アメリカや中国、欧州、台湾、韓国といった近年半導体産業に関して力を持っているエリアでの政策等を見ていきます。各メーカーの動きを見ることも重要ですが、大規模な産業支援がなされると業界全体が大きく動くことにもなるため、政府の動向をチェックすることも大きな意味を持ちます。
アメリカでの主な動向としては、1件あたり最大3,000億円の補助金、多国間半導体セキュリティ基金などを包含する「国防授権法」が可決されたことが挙げられます。また、バイデン大統領が5兆円以上にもなる産業投資の法案に賛意していることも注目されています。大統領自身が半導体の重要性を説くことで、方向性を強く示しています。
中国での主な動向としては、国家集積回路産業投資基金を設置したこと、半導体関連の技術にトータル5兆円超の大規模投資をしたことが挙げられます。また、地方政府でも計10兆円を超える基金が存在しているのも特徴的です。
アメリカは長らく半導体産業を牽引してきたのに対し、中国は比較的最近力を付け、アメリカと技術覇権の対立ができるほどに伸びています。欧州では2030年に向けて取り組む「デジタル戦略」を策定し、デジタル移行へ20兆円近くの投資を行うなどと言われています。なお欧州は日本同様、一昔前では支配的な地位を持っていましたが、現代ではややシェアを落としています。
中国同様半導体産業で力を付けてきているのが台湾と韓国
台湾は、ハイテク分野を中心とした補助金等の優遇策を始め、累計3兆円ほどの投資申請を受けています。そして半導体分野に関して300億円の補助金を投下する計画が示されています。
韓国は、AI半導体技術への投資に1,000億円を計上し、その他半導体を含む素材や部品等の開発に対し、5,000億円以上を集中的に投入する計画も公表しています。また、「総合半導体大国」を実現するため「K-半導体戦略」も策定されています。
各国主メーカーの動向
続いて各メーカーの動きも見ていきましょう。
アメリカ国内での動向
- 「インテル」が2兆円超を投入しアリゾナ州に新工場の建設を公表。ファウンドリー事業にも参入
- 「TSMC」が、アリゾナ州にある工場に数兆円規模の追加投資を検討
- 「サムスン電子」は、約2兆円を投下して建設する新工場の候補地としてオースティン、ニューヨーク、アリゾナ州などを挙げている
欧州内での動向
- 「インテル」のCEOが、欧州への工場新設に約8,700億円の助成金を求める。CEOは半導体受託生産の場としてドイツが適すると述べた。
中国内での動向
- 「TSMC」は、約3,100億円を投じて自動車向けの半導体などを増産すると示した。既存の工場に新ラインを設け、2023年に量産の体制を整えるとされている。
アメリカと中国の対立による影響
アメリカと中国の技術覇権対立によって、日本含め多くの国々が影響を受けています。アメリカは、上で挙げたような取り組みによって自国半導体産業の発展を狙うとともに、中国企業の製品について輸出管理を強化しています。中国でも輸出管理法を成立させるなど、輸出に関して規制が強化されています。
このことを受け、関係国も中国市場のサプライチェーン見直しを行っています。また、アメリカによる技術の囲い込みのおそれがあることから技術の国内回帰も進められています。台湾での補助金等の優遇策も、自国への投資回帰を促すものですし、韓国や欧州でも自分たちのエリア内で技術力を高められるよう産業支援政策が取られています。
日本の国際戦略について
こういった背景を受け、日本でも「先端技術のインテリジェンス強化」「有志国との連携による産業政策の協調」などが重要な国際戦略として掲げられています。そこで、半導体サプライチェーンの強化、諸外国とも連携したイノベーション、安定供給の確保などを推進する取り組みを行うとしています。
例えば、欧州とは半導体サプライチェーンやイノベーションに関する「日EU共同シンポジウム」を開催したり、台湾とは共同研究や安定供給に向けた緊密な情報共有、半導体需給に関する意見交換をしたりしています。
その他の国とも、GAMS(Government/Authorities Meeting on Semiconductors)などを活用して情報共有や研究開発などの国際連携が取られています。※GAMSとは「半導体政府当局会合」とも言われ、半導体に関する政府・当局間の会合を意味
まとめ
半導体産業に関する各国・メーカーの取り組みなどを紹介しました。AIやIoT、5Gなどのテクノロジーが発展してきたことも関係していますが、特にアメリカと中国の動きが世界中に影響を及ぼしています。各国が本格的に投資を始めていますし、今後半導体関連の業界は大きく変化していくかもしれません。
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