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Si(シリコン)パワー半導体に関する最新技術!耐圧系別の開発動向をチェック

Si(シリコン)は半導体材料として目新しい存在ではありません。しかしながら、未だ主力として活躍している材料ですし、研究開発も盛んに行われています。そこでこの記事では、「近年のSiに関する研究開発では何が注目されているのか」について解説していきます。

 

大口径ウエハ量産技術開発による低コスト化

Siパワー半導体にも色んな種類があるのですが、全体として言えるのは「大口径ウエハの量産技術開発」が重要であるということです。大口径ウエハが大量に製造できるようになれば、大幅な低コスト化が実現されるからです。

  

これまでの主流は200㎜ラインです。直径20㎝の薄い円盤を製造するのですが、これが30㎝になることで、同じ製造プロセスにおいて倍のチップ数が製造できるようになるのです。 

すでに300㎜ラインの稼働が一部では始まっており、例えばドイツのInfineon社では300㎜ラインを使った製造が始動しています。アメリカでもLSI向け300㎜ラインをパワー半導体向けに転用する動きがあること、中国でも複数の300㎜ラインが建設されているとの報道がなされています。

 

耐圧レベル別の状況

パワー半導体は耐圧レベルに応じて技術的課題が異なります。そこで以下のように区分してそれぞれの開発動向を紹介していきます。

  • 低耐圧系(100V以下)
  • 中耐圧系(100V〜600V)
  • 高耐圧系(1200V)
  • 超高耐圧系(1700V~)

 

低耐圧系(100V以下)

100V以下の低耐圧系では、すでに普及している「Si-MOSFET」をより性能アップさせる取り組みが進められています。具体的には「オン抵抗の低減」に向けた開発です。

MOSFETでは動作させた時のドレイン・ソース間に抵抗が生じるのですが、当然、このオン抵抗は小さいほど動作に対するロスが小さいため性能として優れていると評価されます。そこで、微細化の推進およびトレンチ構造の最適化、Si基板の低抵抗化などが試みられています。

なお、「トレンチ構造」とはチップの断面構造の1つのことです。ウエハ表面にゲートが付いた「プレーナ構造」と異なり、トレンチ構造ではウエハの表面に溝を掘ってゲート電極を埋め込み、結果としてセルの面積を小さくすることができるのです。同じチップ面積で比した場合のオン抵抗が小さくできます。

  

中耐圧系(100V600V

100V600Vといった中耐圧の領域でもやはりトレンチ構造の最適化によってオン抵抗を低減させることが重視されています。ただ、中耐圧系では特にスーパージャンクション構造の微細化を目指した開発が進められています。

  

なお、「スーパージャンクション構造」とは、Siにおけるオン抵抗の理論限界を超えるために採用される構造です。Siには、限りなく0に近い抵抗にしてもドリフト層に残った抵抗によりオン抵抗の限界がやってくるのですが、スーパージャンクション構造はこの問題を解決するのに役立ちます。そもそも耐圧の確保をするには空乏層が必要なのですが、そうするとドリフト層における不純物濃度が低くなり、これによってオン抵抗が増してしまうというジレンマがあるのです。

しかしスーパージャンクション構造ではドリフト層においてN・P層が縦溝構造になっており、この場合、電圧印加による空乏層は横方向に広がります。要は、ある程度の空乏層の厚みは確保しつつも、不純物濃度を必要以上に下げなくて済む構造になっているのです。ドリフト層の不純物濃度を通常の5倍ほど上げることができ、結果的にオン抵抗を抑えられることになります。

原理上、溝の間隔を小さくし、深い溝とすることでその効果は高まることになるため、その開発が進められています。

  

高耐圧系(1200V

Si-IGBTが主要デバイスとして普及しており、トレンチ構造の微細化や、フィールドストップ層の導入などにより性能向上が進められています。「フィールドストップ層」とは、IGBTの代表的な構造の1つです。

基板の裏面にフィールドストップと呼ばれる層を設け、これにより空乏層がP層にまで届いてブレークダウンするのを防ぐ構造になっています。なお、高耐圧系は自動車の電動化などの恩恵を受け、今後需要が拡大していくと見られています。

  

超高耐圧系(1700V~)

数kVに達すると、主要なパワーデバイスはSi-IGBTからSiサイリスタへと移ります。

この領域では高耐圧だけでなく大電流容量のニーズが高くなります。また、超高パワーでの運用であるため小さな抵抗割合であっても莫大なロスとなってしまい、やはりオン抵抗の低減は欠かせません。

そこでこの領域におけるSiパワー半導体技術開発が世界的にも盛んになっています。また、Si-IGBT6.5kVからさらに高い耐圧でも利用可能にすることが重要と考えられ開発が行われています。

  

まとめ

パワー半導体材料としてのSiは、「すでに完成している」「限界を迎えている」と言われることもありますが、まだまだ改善の余地はあり、実際にSiパワーデバイスに関して開発が行われています。

特にSi-IGBTの性能向上には多くの余地があるとされており、ロス低減への注力がなされています。

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