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次世代パワー半導体素材SiC(シリコンカーバイド)について

パワー半導体は電源のコントロールなどを担い、産業機械や自動車など幅広い用途を持ちます。将来性も見込まれており、世界市場は今後9年で倍増するとも言われています。

そしてパワー半導体の中でも近年注目を集め、企業のみならず国家も積極的な研究開発を進めているのが、次世代素材SiC(炭化ケイ素、シリコンカーバイドとも)です。電力損失を大幅に抑えることができることなどから期待を寄せています。そこでこの記事ではSiCがどのような素材なのか、現状どのような課題を持っているのか、具体的な利活用例などを解説していきます。

 

パワー半導体とは

そもそもパワー半導体とは、半導体のうち、電源などのパワーユニットのコントロールをするものを言います。交流を直流に変えたり、直流を交流に変えたりといった電力変換や交流における周波数の変換、電圧や電流の調節、電源のオン・オフを切り替えるスイッチングなどの役割を担います。

 

マイクロプロセッサやLSIといったデバイスは大きな電圧に弱く壊れてしまう可能性がありますが、パワー半導体では大きな電圧や電流に耐えられるように設計されているのが特徴です。そのため電子機器内部で電流や電圧の制御をして、電子機器の頭脳として機能するマイクロプロセッサやLSIなどにこれを供給しています。

具体例を挙げると、パソコンはもちろん、LED電球やACアダプター、さらにエアコンや冷蔵庫といった一般家庭にあるデジタル機器にも組み込まれています。他にも自動車や鉄道車両、産業機械、発電プラントまで幅広く利用されています。

 

パワー半導体の課題

パワー半導体は大きな電圧・電流を扱うため、熱の発生・電力の損失が避けられません。そして熱が発生し過ぎると誤作動にとどまらず機器の破損につながりますし、必要な電力も増大してしまいます。

そこで機器内部には熱を逃がすよう、回転ファンやヒートシンクが備え付けられています。また、そもそもの原因をなくすためにはデバイスの効率向上、小型化も大きな課題です。ここで重要になるのが、採用する半導体の素材です。どのような素材を採用するかが性能に大きく影響するからです。

これまでの主要素材はSi(シリコン)で、地球上で多く獲れ、低コストであることなどから代表的な半導体素材とされてきました。しかし、性能を大きく向上させるにはSiに代わる「次世代素材」、SiC(炭化ケイ素、シリコンカーバイド)GaN(窒化ガリウム)などの実用化が必要です。

 

SiC(シリコンカーバイド)とは

SiCはシリコンと炭素から構成される化合物半導体です。 

絶縁破壊電界強度がSi10倍ほどもあり、バンドギャップも約3倍広いです。そのため高温環境でも動作ができます。これまでSiでは限界とされてきた領域でも利用が進むでしょう。また、SiCを用いたパワー半導体は、シリコンよりも電力損失が小さいです。

試作の段階でもオン抵抗を70%ほど低減させることに成功しています。Siでもオン抵抗に関する改善は行われてきましたが、スイッチング損失から発生する熱の問題があり、高周波駆動には限界があったのです。さらに高速にもなるため、結果として、SiCであれば高耐圧」「低オン抵抗」「高速という3つが実現できます。

 

 SiC(シリコンカーバイド)利用における課題

SiCにはいくつか技術課題が残されています。1つは欠陥の低減です。ゲートと呼ばれる制御部分と電流が流れる部分の間にある欠陥の低減が長らく問題とされており、SiCは数十年この課題を抱えています。具体的には、SiCと酸化膜との境界に高密度で欠陥が存在しているというものです。

Siと酸化膜間よりも約100倍多いとされ、その欠陥のせいで電子が捕獲されてしまうのです。結果として電流を阻害し、抵抗を増加させてしまっています。そこで欠陥を低減させるアプローチとして、「デバイス製造技術の開発」および「ウェハ製造技術の開発」が現在進められています。

 

もう1つの課題は、ウェハの大口径化です。これまで多く採用されてきた昇華法でのウェハ製造では大口径化が難しく、また、品質の問題も生じます。そこで大口径化、高品質化に向けて昇華法以外の手法(ガス法、溶液法など)の開発も進められています。また、Siと比較して高コストになってしまうという課題もあります。

 

SiCパワー半導体の産業利用

SiCに関しては、2015年に輸送用機器向けの用途で使われるなど、少しずつ利用が進められていますが、本格的に利活用が展開されていくにはもうしばらく期間を要します。一般への普及は2025年ごろ、電動車や充電インフラへの需要拡大は2030年にかけて進むと予想されています。

またJR東海もSiCを利用した新幹線向け駆動システムを開発し、近く車両へと採用予定ですし、JR東日本では山手線の新車両にSiCパワー半導体を搭載させています。トヨタもSiCパワー半導体の試験を行い、燃費の改善を確認。今後、電気自動車やハイブリッド車でも急速充電が実現されると見られています。産業機器に関しては、太陽光発電や風力発電施設、データセンターの無停電電源装置などで需要が増すと見られています。

 

まとめ

各企業による研究開発に加え政府による支援も行われていますので、現状、技術課題はあるものの次世代パワー半導体素材であるSiC(シリコンカーバイド)は今後従来の素材に置き換わっていくことでしょう。

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