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デジタル技術の進歩とエネルギー消費の増大|半導体に求められる省エネ性能について

デジタル技術の進化は私たちの生活に便益をもたらしますが、その一方で消費エネルギーを増やしていることにも注目することが大事です。発電できる電力量は無限ではありませんので、むやみに消費エネルギーを増やしたのでは需要と供給のバランスを維持できなくなるのです。

そこでデジタル技術の進歩と同時に、省エネ性能の向上も重要視されるようになってきました。半導体技術の進化は省エネにも寄与することから、今後の動向に注目が集まっています。

デジタル技術に関する世界の潮流

デジタル技術に関連して、ここ数年だけでも世界で様々な出来事が起こりました。例えばロシアによるウクライナの侵略は、結果的にインフレやエネルギー価格の高騰を引き起こし、遠く離れた日本でもその影響を受けることとなりました。また、新型コロナウイルスの流行もあり世界の重要拠点でロックダウンが起こることで、グローバルサプライチェーンの脆さが露わになりました。

半導体不足の問題は未だ解決していませんし、半導体調達の自律性の重要性を考える機会となっています。さらに、気候変動が議題に挙がることも増え、脱炭素目標を掲げる国も増えました。経済の成長と排出削減を両立することがこれからの社会には重要と考えられており、半導体や蓄電池等の性能向上に注力する必要に迫られています。

今後のエネルギー消費量が課題

デジタル技術の活用拡大は生活を豊かにして、経済も成長させますが、電力消費量も増加してしまいます。そこでデジタル技術の進歩がめざましい昨今では、エネルギー消費の急増が新たに課題として出てきました。

情報通信量の増大とエネルギー消費の関係

インターネット上の通信量に着目すると、2022年時点から2030年にかけてその量は倍増すると予測されています。そしてIT領域における電力消費はその間に約1.5倍増大すると見られ、特にIoT機器の使用やストレージの分野で消費量の伸びが大きいと考えられています。

エネルギー消費量と発電電力量のバランスについて

エネルギー消費量の増大はAI開発も関係しています。AIに関する計算量は今後さらに増大していくとみられ、2018年時点の国内において、AIによる電力消費量は「0.7TWh」ですが、2030年には「16TWh」、2050年には「3000TWh」にまで増えていく見込みです。

日本の総発電電力量は、2022年のデータによると1032.8TWhです。また、電力を消費するのはAIだけではありません。ICTインフラ(社会の革新を支える基盤となるインフラ。光ファイバー網やクラウドコンピューティング、データセンターなどのネットワークインフラ、その他情報処理機器や情報通信サービスなどを指す。)の消費電力は日本全体の消費電力量の4%ほどを占めており、急速に増えた場合に備えてエネルギー効率の向上を進めていかなくてはなりません。

半導体の進化による省エネが重要

情報通信量を減らさず消費電力量を抑えるためには、半導体の進化が非常に重要です。半導体技術の進化により省エネエレクトロ製品の利用が拡大すれば、2030年時点で、世界全体で10%ほどもエネルギー消費が抑制できるという見立てもあるのです。

これは経済産業省が示す「半導体・デジタル産業戦略」の中でも言及されています。省エネ製品の「利用拡大なし」と「加速的な利用拡大」の両シナリオで2030年まで経過したとき、世界で300GWhのエネルギー消費量の差が生じると示されています。この値は、現在における日本の発電量の3割ほどを占める大きなものです。日本でも脱炭素とデジタル技術の両立を図るため、いくつかの施策が考えられています。

例1:データセンターのエネルギー消費最適化

データセンターのエネルギー消費最適化についての検討が進められています。従来の高速LANは、CPUやメモリ、ストレージなどの全機能を持つサーバーを並列する形で構成するのが一般的でした。しかし機能ごとにサーバーを分けて並列させる構成とする新たなデータセンターを実現することで、システム全体として省エネ化が図れるといわれています。各サーバーを必要十分のエネルギーで稼働させることでエネルギーを最適利用し、異なるデータセンター間での分散処理によりエネルギー消費を最適化するのです。

例2:半導体チップの高集積化

半導体の性能を向上手法として「高集積化」が挙げられます。高集積化を進めるにあたり、次の3つの観点が重要となります。

 

  • 微細化:小さくする
    (ロジック半導体などの回路を細かく描く。電力あたりの性能が向上する。)
  • 高密度化:密度を上げる
    (例えばNANDメモリ1GBあたりのエネルギー消費を下げられる。)
  • 高度実装:実装の手法を変える
    (例えばチップ別に製造して基板上で配線するタイプや単一チップで製造するSoCタイプなどがあり、さらに高度な実装技術により熱損失を抑制できる。)

 

高集積化は、電力消費だけでなく処理速度の向上などにも関わってきます。

まとめ

情報通信を行うにも電力消費を伴います。通信量・計算量が増えるほど電力消費も増えることとなり、昨今はAIの登場もあり同分野においては今後さらに加速度的に計算量が増えると予想されています。そこでデータセンターのエネルギー消費最適化や、デジタル機器の核となる半導体の省エネ性能向上など、様々な視点からエネルギー消費量増大への対策が進められています。

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