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製造等が禁止されている有機フッ素化合物「PFOS」「PFOA」について

フッ素を使って作られた「有機フッ素化合物」には、数千もの種類があります。多種多様な化合物があり、フッ素樹脂など新材料開発に関わって私たちの暮らしを豊かにしているものもあれば、人体に悪影響を与える危険なものもあります。人体や環境への影響が懸念されて製造等が規制された有機フッ素化合物については「PFOS」と「PFOA」があります。これらはどんな物質なのか、なぜ規制されているのか、ここでその概要を説明していきます。

 

PFOSPFOAについて

有機フッ素化合物のうち「ペルフルオロアルキル化合物」と「ポリフルオロアルキル化合物」の総称がPFAS(読み:ピーファス)です。「有機」には「炭素を含む」という意味が含まれており、その炭素の連なり方、長さに応じて化合物としての性質が異なります。そのため同じPFASでも撥水性、撥油性、化学的安定性などの物性に違いがあります。

そのため加工次第で優れた性能を持たせることが可能で、その一部にあたる「PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)」と「PFOA(ペルフルオロオクタン酸)」についても、半導体用の反射防止剤やレジスト、金属メッキ、界面活性剤などに広く利用されてきました。しかし広く使ってきた結果、PFOSやPFOAは地球上に広く残留することとなりました。なかなか分解せず、蓄積性があること、また長距離移動性も持つことがかえって悪い結果を招き、北極圏に至るまで残留してしまっています。製造を続けて環境中に蓄積されると、食物連鎖等を通じて人体に悪影響を及ぼし、また、動植物にも悪影響を与えてしまうと危惧されています。

 

PFOSPFOAの影響

PFOSPFOAの蓄積が続くことで様々な問題が生じることから、今では製造が規制されています。規制をかける過程では動物実験などを通してどのような影響が表れるのかが調べられました。その結果によると、免疫系へのダメージ、発がん、コレステロール値の上昇などに影響があると報告されています。とはいえ現在において具体的な問題の発生は報告されていないようです。あくまで今後の危険を予防するため、そして環境への蓄積を考慮しての規制措置ということです。

なお、残留しやすいとはいえ永久に残る物質ではありません。5年前後で濃度が半分になると評価されており、人体に入ったとしてもゆっくりと排出されていると考えられています。そのため仮に摂取をしてしまったとしても、害が及ばないことも十分にあり得ます。身体にどの程度入ると悪影響が出るのか、確定的知見は未だありませんが、現代において一般の方があまり気に掛ける必要はないでしょう。

 

PFASPFOAへの規制について

PFASおよびPFOAへの規制は日本だけのルールではありません。国際的な条約に基づくルールです。POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)により、2009年にまずPFOSが廃絶対象として選定されており、その10年後2019年にPFOAについても廃絶対象に選ばれています。それを受け、日本国内に適用される法律、いわゆる「化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)」が施行されました。同法ではPFOSとPFOAについて製造を原則禁止とし、輸入についても原則禁止の扱いになっています。

 

規制による効果

PFOSPFOAに対する規制がかけられてから、身近な場所、例えば河川や底質(河川や海洋、水路などの底表面のこと)、大気中において、濃度が減少傾向にあると報告されています。環境省が自治体とともにモニタリング調査を実施しており、同一地点における規制物質の濃度が年々少なくなっていることが確認されているようです。

 

日常生活で一般消費者が気にする必要はない

PFOSPFOAは浄化することが難しいです。そのため過去に使用されて環境中に排出されたものは土壌に残存してしまい、河川水、地下水に溶け出しているケースもあります。ただ、水道水に関しては別途水道事業者に対する検査実施の義務付けなど、安全性を担保する仕組みが設けられています。そのため水道水に関してはあまり神経質になる必要はないようです。

同じ有機フッ素化合物にあたる物質にはフッ素樹脂もありますが、フッ素樹脂コーティングのなされた調理器具に関しても心配はありません。規制前には一部PFOAが使用される例もあったようですが、すでにフッ素樹脂製造業者による自主的な環境対応が完了していると報告されています。現在は使用されておらず、規制前の調理器具においてもすでに残存していません。

 

まとめ

化学物質に対して抵抗感を抱く方もいるかもしれません。確かに毒性のある物質も存在しており、フッ素もその1種ではあります。そしてフッ素を使ったPFOSPFOAについては環境に残留する性質が強く、規制対象にもなっています。

しかしすべてのフッ素化合物が危険だということではありません。政府の公表する資料でも、現在流通しているフッ素樹脂製品などは問題がないことが示されています。またフッ素を使ったものとして歯に塗布するフッ化物などもありますが、こちらも心配は不要です。イメージだけで危険視するのではなく、適切な知識を持って個別に評価を行うことが重要といえるでしょう。

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