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PTFEとテフロンの違いは?歴史や国内での取り扱いについて

樹脂を取り扱っているとよく「PTFE」って聞きますよね。なんとなくすごく性能の良い樹脂というイメージだけど、具体的にどういうものなの?一方で料理器具のCMとかを見ていると「テフロン」とか「テフロンコーティング」ってよく聞くけど、PTFEとどう違うのだろう。

そんな疑問について簡単に解説していきたいと思います。

歴史と名前の由来

PTFE(polytetrafluoroethylene)は最も早く工業化されたフッ素樹脂で、デュポンによって発明されました。1938年当時、デュポンはテトラフルオロエチレンと呼ばれる炭素とフッ素からなる分子を用いて冷媒の研究を行っていました。しかしある時にガスボンベ中で白い物質を発見し、それを測定してみたところ後述の様な極めて面白い物性を持つ物質だったことがわかりました。その物性の特異性ゆえに、すぐさま工業化の研究がすすめられ、1946年に製品化されました。

 デュポンはこの樹脂を「テフロン」と名付けました。その後もPTFEに次いでPFAFEPといったフッ素樹脂を開発し、テフロンの銘柄に加えていきました。近年では、デュポン以外にもPTFEを製造している企業があり、それぞれポリフロン(ダイキン)、フルオン(AGC)、レアフロン(NOK)という銘柄で売られています。

 蛇足ではありますが、同時期にポリエチレンも偶然発見(1939年工業化)されています。その結果、PTFEはマンハッタン計画に、ポリエチレンは軍事用レーダー絶縁体として連合軍の勝利に大いに役立つこととなります。材料革新には基礎研究が必要ですが、今も昔も基礎研究が不足している感は否めませんね。

PTFEの特徴

PTFEの特異な物性というのは耐熱性、耐摩耗性、耐腐食性、摺動性に優れた極めて安定な点です。

ポリエチレンとポリ塩化ビニル樹脂とPTFEを比べると、PTFEの特異性がよくわかります。ポリエチレンもポリ塩化ビニル樹脂もPTFEも主鎖は炭素結合によってつながっています。ポリエチレンは炭素の周りが水素で、ポリ塩化ビニル樹脂は(一部)塩素で、PTFEはフッ素で囲まれている「だけ」の違いしかありません。特に塩素の性質は周期表からわかるようにフッ素に近く、樹脂にした場合も似たような性質になると想像できます。

しかし、実際はどうでしょうか。熱を加えていくと100℃位で前者の2つは、多くの樹脂と同じように柔らかくなり、しまいにはドロドロになってしまいます。一方でPTFEの方は200℃まで上げても変形するそぶりは見せません。また、太陽光の下に置いておくとポリ塩化ビニルもポリエチレンも紫外線によって分解していき、ボロボロになっていきますが、PTFEは全くの無傷です。更にはガラスすら溶かすような強酸であるフッ化水素を吹きかけると、前者二つは酸化されてしてしまいますが、PTFEだけは酸化される気配がありません。

これがPTFEの性質が「特異的」と前述した理由です。その特異性は何からくるのか、ミクロな分子構造を見ていきましょう。

PTFEの分子構造

まず、フッ素―炭素間の結合は、水素―炭素間の結合や炭素―炭素結合の力よりも大きいです。炭素水素結合の結合乖離エネルギーが103kcal/mol、炭素―炭素結合のそれが88kcal/molに対し、フッ素―炭素間の結合は108kcal/molです。そのため、通常の炭化水素樹脂に比べて結合力が強いため、分子間の結合を壊すのに大きなエネルギーが必要になってくるのです。しかし、それだけではPTFEの異常なまでの特異性を説明できません。実はPTFEの化学的安定性は上述の原子間のエネルギーよりも、分子の形、つまりコンホメーションが原因です。

炭化水素は数珠つなぎとなった炭素と、その炭素一つ一つに水素が2つついた構造を取っています。一方でPTFEは水素の代わりにフッ素がついています。詳細はテフロンの記事で述べましたが、水素よりもフッ素の原子半径が大きいため、フッ素は互いに30度ずつずれながら重なっていき、らせん構造をとります。そしてその結果、PTFEの分子鎖は炭素鎖をフッ素原子がびっしりと覆いつくした樹脂構造となります。

ここで化学反応について考えると、一般的に酸などの外部からの化学的に攻撃を受けると、水素原子をすり抜けて炭素―水素結合や炭素―炭素結合を攻撃して結合を壊そうとします。しかし上述のようにPTFEの場合はフッ素が炭素鎖の表面をびっしりと守っているため、極めて強い酸化力を持つ物質だとしてもテフロン分子鎖の内側を攻撃することができません。

また、このびっしりと覆ったフッ素によって、炭素鎖は非常に強直になります。そのため熱によって炭素鎖を動かそうとしても、フッ素が邪魔して動くことができません。これが、耐熱性が高い原因と考えられています。余談ではありますが、この性質によってPTFEは成形加工が極めて難しく、部品として使おうとすると極めて高価になってしまう理由です。一般的な樹脂は熱によってガラス転移温度(Tg)まで柔らかくし、金型に流し込むような射出成型と呼ばれる方法で連続して成形することができます。しかしPTFEは熱をかけても柔らかくならないのでそれができません。その結果、PTFEは粉末にして金型に敷き詰め、圧力をかけながら融点(Tgよりはるかに高い)まで昇温し、一つ一つ押し固める必要があるのです。

製造企業

近年では多くの企業がPTFEを製造しています。各社の登録商標は以下の通りです。

  • テフロン(Teflon): デュポン
  • ポリフロン(Polyflon): ダイキン工業
  • フルオン(Fluon): AGC
  • レアフロン(NOK): NOK
  • ダイニオン(Dyneon): 3M

間違いやすいのが、上記の企業で各々の銘柄としてPTFEを製造しておりますが、その銘柄がPTFEだけを指すわけではありません。つまり、デュポン商標のテフロンはPTFE以外にも様々なフッ素樹脂類(PFAFEP)を含む、ということです。

製造法

ここではダイキン工業の代表的な製造法について紹介します。

PTFEの製造は四フッ化エチレン(TFE)を原料とします。これはクロロジフルオロメタンの水蒸気下条件における熱分解によって行われます。

CHClF2→CF2=CF2+HCl

この反応は700度以上で行われる上、HCl等の有害ガスも発生しますので安全管理が大変重要です。一方で、PTFEの重合は超高温高圧下で行われます。

CF2=CF2 → ―(CF2)n―

また、条件次第では下記の様な副反応もおきます。

CF2=CF2 → CF4+C

どちらの反応も重合熱が4761kcal/molと非常に大きく、暴走反応に十分に注意して運転することが必要です。製造現場ではシビアな熱、圧力コントロールが行われています。

まとめ

PTFEは数あるフッ素樹脂の中で最も代表的なフッ素樹脂の一つです。耐熱や耐薬品、耐候性に優れているので、家庭で一般的に使うものからファッションや医療や宇宙開発の部品などとても多くの部分で使われています。

テフロンというのはあくまでデュポンの商標なので、PTFEとの違いはありませんが一般的に世間で広く普及しているのが「テフロン」、素材として技術者やメーカーに広く普及している呼び方は「PTFE」といったところでしょうか。

別ページ:テフロンとはいったい何?誕生からその性質までを紹介

別ページ:こんな商品を取り扱っています

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