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フッ素樹脂の加工~基板利用のための溶液処理とその課題~

電子機器を搭載する基板とは、各種電子部品を乗せて回路を構成するための土台です。電気的な接続するために重要な存在であり、単なる土台ではなく高い性能も近年は求められるようになっています。フッ素樹脂はこの基板への活用も進められているのですが、そのためには一定の加工も必要です。この加工を適切に施すことでフッ素樹脂の良さを活かすことができるのですが、加工が容易ではなくいくつかの課題に直面しています。ここではその加工に関すること、そして課題について言及します。

 

基板における接着性の重要さ

基板として使う材料にはいくつかの性質を備えていることが必要とされますが、その1つに接着性があります。もし、基板の素材と金属との接着性が悪い場合、次のような問題が起こり得ます。

  • 電気的な接続が不安定になる
  • 回路間の接触抵抗が大きくなってロスが生まれる
  • 振動や衝撃に弱くなる

 

接着性が低いことの問題点

接着性が低く回路が安定的に接着されていないと、電気的な接続が不安定になります。そして接続が安定しないと電気信号の伝達に支障をきたすおそれがあります。通信が上手くいかず予期しない動作を起こしてしまったり、機器の故障を招いたりすることも考えられます。また、回路間の接触抵抗が大きくなってロスが生まれる可能性もあります。

そうすると機器の動作効率も低下してしまうのです。振動や衝撃への弱さも機器の故障につながりますので改善されなければなりません。極端に接着性が悪いとこういった問題に直面し、高度な通信用基板としてはもちろん、一般的な電子機器の基板としてもまともに使用することができなくなってしまいます。

 

基板に使われる材料とその接着性

基板に使われる材料には、次のようなものがあります。 

セラミック

窒化アルミニウムなど、高い熱伝導性を持つプリント基板で、高い熱伝導率と低膨張率を持つ。これらは主に高周波特性を求められる回路で使われる。

金属

金属基板は熱伝導率が高い。そこで放熱特性を求められる分野で主に使われる。

樹脂

樹脂は基板によく使われる一般的な材料。例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂などがあり、それぞれの特性に合わせた用途がある。

 

従来からよく基板に使われている材料はエポキシ樹脂ポリイミド樹脂などです。エポキシ樹脂は銅箔との接着性が高く、一般的なプリント基板やフレキシブル基板に広く使用されています。ポリイミド樹脂は耐熱性や耐薬品性に優れており、高温環境下で使用される基板で使用されています。これらの仲間とも呼べる材料に「フッ素樹脂」があります。

フッ素樹脂は特に5G・6Gなどの次世代通信用基板への活用が期待されているのですが、これはエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などと比べて誘電率・誘電正接の面で優れていることが主な理由です。この性質があることによって、伝送ロスについて非常に繊細な通信分野での開発が進められているのです。ただし、フッ素樹脂は接着性が低いという課題を持っています。

 

接着性を高めるために溶液処理が行われる

基板材料の接着性を高める処理に溶液処理があります。溶液により表面を粗くするなどして接着性を高めるのです。基板材料によって適した溶液処理方法が異なり、適切に溶液を選択しなければなりません。例えば次のような溶液があります。

  • 金属イオン溶液
    金属イオンが基板表面に吸着することで接着性を高める。具体的な金属イオンとしてはナトリウムやアルミニウムなどがある。

  • 無機化合物溶液
    基板の表面に膜を形成することで接着性を高める。具体的な無機化合物としてはシリカやチタン酸バリウムなどがある。

  • 有機化合物溶液
    基板の表面に接着剤のような層を形成することで接着性を高める。具体的な有機化合物としてはシリコン樹脂やアクリル樹脂などがある。

 

フッ素樹脂に対する溶液処理

5G6Gなどの次世代通信用の基板では伝送ロスを低く抑えるための処理が高度に求められます。そこで損失の小さい基板材料を使用し、電気抵抗の小ささ電気回路を、平滑な界面にて接着しないといけません。様々な樹脂材料の中でもフッ素樹脂はロスが小さいのですが、表面のすべすべとした性質がとても強いです。これはフッ素樹脂の良さでもあるのですが、強くはじく性質があることで異なる物質との接着が難しくなっています。そこで接着性を上げるための処理が必要です。

これまでは金属ナトリウムによって表面を少し粗くしていたのですが、これでは高度な通信を要する場面では必要な機能性を損なってしまいます。しかも金属ナトリウムは劇薬でもあり、激しく反応を起こすことで樹脂を変色させてしまうこともあります。さらには環境負荷の問題、加工作業における安全性の問題もあります。さらに高度な活用を進めていくには、この問題を解決する必要があるでしょう。

 

まとめ

次世代通信に向けた開発が多方面から進められており、フッ素樹脂を基板として使うための研究も進められています。溶液処理のやり方についても見直され、平滑な表面を維持しながら接着性を高める新技術も開発過程にあります。

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