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自動車向け半導体不足の現状と増産が難しい理由

現在、世界的な半導体不足により、様々な製品の生産に影響が出ています。そしてその始まりは自動車向けの半導体が不足したことにあります。ここでは特に自動車産業に着目し、半導体不足の原因、およびその現状について解説していきます。 

自動車用半導体の内訳

まず簡単に、自動車のどこにどのような半導体が用いられているのか説明しておきましょう。 

実は自動車には多様で多数の半導体が組み込まれており、コンピュータが走っているような状態にあります。例えば車載カメラ、イメージセンサーなどには光半導体およびセンサーが用いられていますし、データ処理回路にはロジック、ブレーキやエンジンの制御などにはマイクロ、ドアやウィンドウ制御から電源管理などにはアナログが用いられています。

冒頭で自動車向けの半導体が不足したことに触れましたが、このうち主に不足に陥ったのはマイクロおよびディスクリートやアナログの部分とされています。特にMCUパワー半導体の不足と考えられています。

  

半導体が不足したことによる自動車の減産

自動車を作るために必要な半導体が足りなくなれば、当然、自動車を生産できる数も減ってしまいます。そのため2020年からは各国の自動車メーカーが減産せざるを得ない状態になっています。結果、世界中で数百万台もの減産が起こるのではないかとも言われています。

半導体のみならず、新型コロナウイルスの流行により経済全体がダメージを受けていますが、ワクチンの普及などもあり少しずつ経済は再開を始めています。しかしながら半導体の供給に関してはなかなか追い付いていません。そのため自動車への需要に対応できていないのです

  

なぜ自動車向けの半導体が増産できないのか

半導体が不足した背景には、「自動車需要が急に増大したこと」「半導体製品全体の需要が増したこと」「ファウンドリが東アジアに偏っていること」「ファウンドリ側が自動車関連の半導体製品の増産に積極的でないこと」などがあります。

自動車需要の急な回復とIT関連機器での需要増大

2020年から新型コロナウイルスが急速に広まり、その影響を受けて自動車に関する需要が縮小することが予測され、これを見越して供給を少なくしていました。しかし予想より早く需要に関しては回復が見られ、その結果、供給が間に合わなくなったのです。すでに在庫の削減や生産契約のキャンセルなどをしていたため、すぐに追加生産をして対応することはできない状況にあったのです。

他方で、日本国内でもよく聞くようになったDXが進み、自動車に限らず様々なIT関連機器で半導体製品の需要は増大していました。そのため自動車に関してキャンセルされた生産枠がこちらの受注に充てられ、自動車向け製品の製造を困難にしています。

   

ファウンドリの東アジアへの偏り

半導体産業は垂直統合型のIDMから、分業型としてファブレスやファウンドリなどに分かれるケースが増えました。ただ、あらゆる半導体製品でこのような変遷があったわけではなく、自動車向けの半導体メーカーに関してはIDMが多数派です。しかしながら、設備投資への節約などを目的として、一部ファウンドリに発注を出すという方法も採られていたのです。

ファウンドリに余裕があればそれでも問題ないのですが、現状、ファウンドリは台湾や韓国、中国などの東アジアに偏っています。数社のファウンドリに世界のメーカーが依存してしまっている状態であり、すでに稼働率が高いことからも生産能力に余裕がありません。またリードタイムが長いことからスピーディに増産へと対応することも難しいのです。  

その上、自動車向け製品の割合は品質要件が厳しいですし、自動車以外の半導体市場が大きくなることで相対的に売上の割合が小さくなることから、ファウンドリ側が積極的に増産しにくい状況にもあります。半導体市場の大半を自動車が占めていればファウンドリも対応せざるを得なくなると考えられるところ、今では上述の通りDXの進展もあり、データセンターやPC、スマホ、ゲーム機器などの関連機器の需要が急速に高まっています。するとどうしても枠が限られてしまいますので、供給の回復が遅れてしまうのです。

  

まとめ

以上のように、半導体産業の構造上の問題、他の機器による需要が増していることなどが原因となり、自動車向けの半導体が不足しています。結果、自動車は減産すると見込まれています。

そこで日本やアメリカ、EUなども圏内に工場を誘致する意向を示しています。ただ、工場の建設は計画から稼働までに時間がかかるため、すでに建設計画が公表されているアメリカでの製造工場建設でも操業開始は2024年とされています。

日本でも今後、国内に製造工場の建設が予定され、併せて研究開発の拠点を設置することも公表されています。ただ、半導体不足、とりわけ自動車産業における半導体不足の解消にはしばらく期間を要すると見られています。

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