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有機半導体の開発に欠かせない分子技術とは?有機半導体の特徴についても紹介

有機物の良さが活かせる有機半導体は、半導体利用の幅をさらに広げてくれます。そしてその応用をより効かせるため、より高性能化を図るために重要なのが「分子技術」です。

この記事では、まず「有機半導体とは何か」有機半導体にはどのような特徴があるのか」について触れ、さらに有機半導体の進化を続けるために重要な分子技術について解説していきます。

 

有機半導体について

「有機物」とは炭素を含む物質のことです。かつては「生物が産出する化学物質」であると考えられていましたが、技術力の向上により人為的に作り出すことも可能になったため、表現が「炭素が原子結合の中心になる物質」というように変わりました。つまり有機半導体とは、金属などの無機物としてではなく、炭素を構成要素とする半導体であるといえます。

 

有機半導体の特徴

有機物は電気を通さないものが多いです。絶縁性を持つため、プリント基板やパッケージ、誘電体などとして用いられることも多いです。その他以下のような特徴を持っています。

  • 軽い
  • 低温、低圧力で成型できる
  • 柔軟性が高い
  • 大きな面積のものを作りやすい

一切電気を通さないのであれば半導体としての利用は難しくなってしまいますが、研究開発が進んだ結果、導電性・半導性を有する有機物も生み出されるようになりました。 

そこで有機半導体は、有機物の特色を活かしたフレキシブルな半導体材料であると評価できます。大面積で作りやすいのは、溶液からの塗布をはじめとしたウェットプロセスによる作成ができるためです。

ウェットプロセスとは溶液に融かされた分子を、液層から成膜する手法のことであり、低コストの溶液を使用することで有機半導体自体の生成も低コストに抑えやすくなります。また柔軟性が高いことで、曲がった部分や柔らかい箇所にも使いやすく、利用場面も広がるという利点が得られます。

 

有機半導体の利用例

有機半導体はすでに色んなところで利用されています。例えば、最も早く実用化の恩恵を受けたものとしてコピー機が挙げられます。コピー機内部にある「感光体」として採用されたのです。また、「有機EL」にも利用されています。ELとは「Electro-Luminescence」のことで、有機物質に対する電圧印加による発光現象を意味します。そのため有機ELはテレビなどのディスプレイに使用されています。有機物ならではの薄さ・軽さが活かされています。

 

「フォトリフラクティブ素子」にも活用されています。フォトリフラクティブ素子とは光伝導体を利用した情報デバイスです。光を照射することで素子中に屈折率の空間的な分布が誘起されるのですが、この特性を利用してホログラム記録が実現されます。結果、光の位相情報まで再現した3Dディスプレイであるなど、様々な光デバイスへの応用が期待されています。

環境問題に資する「太陽電池」にも活用されています。シリコンを使えば、成熟した技術による高い信頼性が得られる反面、製造に大きなエネルギーが必要になること、電気への変換効率があまり高くないという問題があります。この点、有機太陽電池であれば製造に必要なエネルギーが小さい上、有害な物質を使わないことから環境にも良いという利点が得られるのです。

 

有機半導体の応用では分子技術がキーになる

有機半導体の場合、比較的キャリアの移動速度が遅く、この点無機半導体に劣っています。しかし有機化合物の設計・合成を調整することでこの欠点をカバーすることも理論上可能です。ここで重要になるのが「分子技術」です。

分子技術の水準が相当に高まると、理想的な電気的特性を示す材料をゼロから作り出すこともできると期待されています。分子技術は世界の技術開発トレンドでもあり、その中でも有機エレクトロニクスは近年盛り上がっている分野の1つです。今後分子技術は進展し、有機半導体についても進化していくことでしょう。

 

分子技術とは

そもそも「分子技術」とは、分子の設計・合成・集積により、所望の機能を創出するための一連技術です。日本発の研究領域と考えられており、日本が強みを持つ分野でもあります。近年はフランスなど、日本との共同研究を通して研究開発を始める国も出てきており、これからより発展していくのではないかと見込まれています。

 

なお、分子技術は以下の6つに分類できます。

  • 設計・創成
    精密合成技術と計算科学により新機能物質を作り出す
  • 形状・構造の制御
    分子の形状・構造を厳密に制御し、新機能を創出する
  • 変換・プロセス
    新たな触媒やシステム開発に繋げる技術
  • 電子状態の制御
    分子の電子状態をコントロールする技術
  • 集合体・複合体の制御
    分子集合体・複合体の形成、機能解析、化学制御に関する技術
  • 輸送・移動の制御
    イオンの輸送速度、選択性向上などに関する技術
     
SDGsとの関りも強い技術である

分子技術は、単に製品・部品等の高性能化ということだけでなく、環境やエネルギー、資源、医療問題に貢献する技術としても注目を集めています。これら社会的課題の抜本的解決に資するものであり、持続可能な社会を実現するための重要と考えられています。

 

ニューラルネットワークを用いた新手法も模索されている

「新規有機半導体分子」の開発は、分子技術の応用分野にあたります。

これまでは科学者による知識と経験に基づき、予測を繰り返しながら開発されてきましたが、最近では人工ニューラルネットワークを使った新たな新手法も模索されています。これにより膨大な計算の繰り返しなく有機半導体の電子構造が求められ、開発が高速化できるとの期待が寄せられています。

 

まとめ

エレクトロニクス分野をさらに発展させ、さらに便利な世の中、より社会問題等に配慮したデバイスを生み出すためには、有機半導体を応用していくことが重要になってきます。そしてその高性能化・新機能創出のためには分子技術の進展が欠かせません。世界の開発トレンドでもあるため、今後さらにハイレベルな有機半導体が生み出されていくことでしょう。

 

 

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