NEWS

期待の半導体材料「低次元材料」「トポロジカル材料」とその研究開発の動向を解説

半導体材料としてはシリコンがこれまで中心的存在でしたが、高速処理・低消費電力・メモリ容量増大といった高性能化はムーアの法則に沿った微細化・集積化に伴うものでした。しかし微細化のレベルも限界に近付きつつあり、同様の進化過程を歩んだのでは性能向上も頭打ちになってしまいます。

この限界を超えるためのアプローチとして、3次元微細加工技術なども進められていますが、別のアプローチとして新材料の開発も進んでいます。そこで次世代のデバイスを生み出すため、低次元性やトポロジーに起因する特徴的な電子状態を特徴として持つ材料に期待が集まっています。

以下ではこの「低次元材料」「トポロジカル材料」について解説します。

 

「低次元材料」の内容と開発動向

微細化の限界を打破するため、注目されている材料の一つが「低次元材料」です。低次元材料とは、材料の空間的構造に着目したとき、その性質が3次元ではなく、2辺(幅・長さ)あるいは1辺(長さ)のみで決まる材料のことです。2辺のみで決まるものを「2次元材料」、1辺のみで決まるものを「1次元材料」と呼びます。

例えば、2次元材料としては2004年に発見されたグラフェンが、1次元材料としては1991年に発見されたカーボンナノチューブが挙げられます。これらの低次元材料は3次元材料と異なる特異な電子状態を持つことが知られており、シリコンと比べても電荷移動度が大きく優れており、その点新材料として活用できないかとグラフェンなどが注目されています。

エレクトロニクス、センシング、エネルギー変換など様々な応用分野にて期待され、昨今も世界的に研究開発が進められています。低次元材料の研究開発を行う意義としては以下2点があると言われています。

  • 原子レベルの薄さ・細さという構造的特徴を持つ物質の、特異な物性やその応用を探求すること
  • 新たな材料、新たな機能の創生と探求

具体的には、非常に高い電荷移動度を利用したエレクトロニクスデバイスの開発、エネルギー貯蔵や変換機能を利用したエネルギーデバイスの開発、低次元材料特有の光学的磁気的特性、スピン特性等を活かしたオプトエレクトロニクスおよびスピントロニクスデバイスの開発などが挙げられます

 

低次元材料に関する取り組み

日本ではこれまで、NEDOのプロジェクトとして「透明電極向けインジウムを代替するグラフェンの開発」「革新的ナノカーボン材料先導研究開発」「低炭素社会を実現する革新的カーボンナノチューブ複合材料開発プロジェクト/グラフェン基盤研究開発」「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」や、JSTのネットワーク型研究であるCRESTにて「二次元機能性原子・分子薄膜の創製と利用に資する基盤技術の創出」などが推進されてきたという背景を持ちます。

また、産業界でも、企業の情報交換の場としてグラフェン研究会が設立されたり、2011年には産業技術総合研究所と企業5社によりグラフェン事業も立ち上げられたりしています。さらに、産総研グラフェンコンソーシアムの立ち上げにより、企業・行政・大学・研究機関の連携の場も設けられています。

   

その他EUやアメリカ、中国、韓国、シンガポールなどでも、基礎研究から応用研究、産業実用化を目指す大型プロジェクトが展開されています。例えば中国ではグラフェン国家基準が2018年に制定され、グラフェンなど関連二次元材料を対象に数十億円規模の研究投資が行われています。

  

「トポロジカル材料」の内容と開発動向

「トポロジカル絶縁体」と呼ばれる物質の存在が明らかになったことで大きな話題となりました。従来の物質と全く異なる状態を持ち、金属や絶縁体、半導体といった分類にも適さない物質です。

物質内部に関しては電流を流さず絶縁体としての性質を持つのに対し、表面では特殊な金属状態が発現。電子が特別な状態になっており、高速かつ不純物の影響を受けにくい特性を持つのです。そのため伝導状態に着目して従来のように金属や絶縁体といった分け方ができず、トポロジーという数学的概念を使って表現されています。

   

この性質を利用することで、超低消費電力デバイスや量子コンピュータに応用できるとみられ、多くの国で研究開発が進められています。トポロジーに基づき新たな物質群の創出、基礎学理の構築、革新的デバイスの創出が目指されています。上述の通り、エレクトロニクスデバイスの分野では微細化の限界という原理的な性能向上の限界が顕在化していますので、新たなパラダイムとしてトポロジカル材料が期待されています。

   

具体的には、高密度高速メモリへの応用に向けた研究、デバイス化技術の構築、巨大な信号生成や高効率なエネルギー変換、信頼性の高い量子計算技術開発、電子構造の制御による物性制御の研究などが進められています。また、「トポロジカルフォトニクス」として、トポロジーの概念をフォトニクスに応用することで低損失高速通信、光の遅延回路や光メモリへの応用も進められています。

  

トポロジカル材料に関する取り組み

日本では、内閣府最先端研究開発支援プログラム(FIRST)や、最先端・次世代研究開発支援プログラム(NEXT)の「トポロジカル絶縁体による革新的デバイスの創出」などによりトポロジカル材料に関する成果が出ているとされています。

また、JSPS科研費新学術領域「対称性が破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象」、「トポロジーが紡ぐ物質科学のフロンティア」によっても基礎学術基盤ができつつあります。

さらに、デバイス応用を加速するため、2018年には文部科学省の戦略目標「トポロジカル材料科学の構築による革新的材料・デバイスの創出」が設定され様々な取り組みが始まっています。その他、アメリカやドイツ、カナダ、中国などでもトポロジカル材料の研究は盛んに行われています。

  

まとめ

これまでと同じ方向性ではデバイスの性能向上に限界がやってくるため、多方面から研究開発が進められています。

低次元材料やトポロジカル材料に関しては、アメリカや欧州の研究開発が活発で、一部の分野では中国でも盛んに取り組まれています。国内でも応用研究に向けた重点化が図られ始めており、これら新材料の応用に期待が集まっています。

 

 

関連ページ:⇨次世代パワー半導体素材SiCについて

関連ページ:⇨【脱炭素社会の実現】エネルギー・環境問題に向けた注目の研究開発分野4選

関連ページ:世界の半導体メーカー企業ランキング10社を紹介!

関連ページ:⇨弊社の製品・技術をご紹介

CONTACT

各種お問い合わせ、ご質問、資料請求など、
お気軽にご連絡ください

SNS

日本ポリマーの
最新情報をチェック!