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超長期保存メモリとは?スマート情報社会を支えるデバイスと開発課題について

世の中にICT機器がありふれ、常に様々なデータが生成・蓄積される社会になっています。多種多様なデータを使いこなすことができればより高度な情報処理・解析ができるようになりますが、そのためには膨大な量のデータを長期的に保存できる環境がなければなりません。

この観点から注目を集めるようになったのが「超長期保存メモリ」です。これからのスマート情報社会発展を支える重要なデバイスの1つです。以下でその内容を解説していきます。

 

スマート情報社会の基盤となるICT

2010年代に4G(第4世代通信)から構築されるクラウド技術が実現され、さらに2030年にかけては5G(第5世代通信)のインフラが導入されると予測されています。より情報通信の環境が整うことで、IoT(Internet of Things)AI(人工知能)ビッグデータを活用したスマート情報社会に近づいていき、医療や福祉の面でもその恩恵が受けられるようになっていきます。

しかし当然ながら、スマート情報社会実現のためにはICT機器が欠かせません。そして重要なのは、単に通信機器を利用するということではなく、新たな機能を持つ「ナノエレクトロニクスデバイス」の存在です。

 

新たな機能を備えたナノエレクトロニクスデバイスがポイント

従来の材料にはない、新機能の活用を視野に、新規デバイスおよび材料開発を進めることが重要です。新機能ナノエレクトロニクスデバイスは、ビッグデータの超高速および超低消費電力での処理に着目した研究開発の領域に属します。エッジAIコンピューティングやIoTなどの応用に向け、従来のエレクトロニクスデバイスの性能をさらに高めるとともに新たな動作原理のデバイス開発を目指す分野です。処理速度や省エネのみならず、大容量化、そして超長期記録も非常に重要なことです。

 

超長期保存メモリデバイスに期待

現在の一般に使用されているメモリ、保存媒体では、数年程度でデータが破損してしまうことも多いです。しかしビッグデータの利活用を進めるためには、100年単位、1000年単位で安全に保存ができなければなりません。そこで超長期保存メモリが求められています。

 

超長期信頼性を実現するメモリとして、MONOS型メモリなどが候補として挙げられています。製造工程、使用環境下での信頼性を確保すること、劣化のメカニズムを解明すること、劣化を引き起こさせない使い方を提案することなど、多方面からのアプローチが必要になりますが、MONOS型メモリなら150℃の環境で1000年以上のデータ保持ができると考えられています。その他、億年単位のデータ保存、1000℃もの高温にも耐えられる材料などにも注目が集まっています。

 

超長期保存メモリの課題

今後、超長期保存メモリを実用化していくことが重要になってきますが、多くの課題があります。

 

材料開発に係る課題

まず挙げられるのは、長期に渡り状態を保持できるメモリ材料の開発課題です。デジタルデータでは0「1の組み合わせにより複雑な情報を構築していますが、この2つの物理的・化学的状態がほぼ変わらないような材料を開発しなければ100年や1000年を超えるような超長期保存メモリは作れません。

 また、耐久性の非常に高いパッケージ技術の開発も大きな課題です。同時に、これまでのデバイスとは桁違いに高密度・高集積化をさせなくてはなりません。

 

回路設計に係る課題

ビッグデータに対応し、大容量のデータを微小な領域に書き込めること、高速の書き出し・読み出しができることも必要です。そこで、高速かつ低消費電力な回路を開発することも課題となります。メモリセル間の干渉の抑制、高感度化などが求められます。 

信頼性の課題

超長期保存メモリの信頼性を確保しなければなりませんが、そのためには「メモリ回路の簡素化」「プロセスの簡素化」も重要な観点です。信頼性保障が必要な要素を少なくすることが大切だからです。また、簡素化はチップコストを妥当なものとするためにも重要なことです。

 

超長期保存メモリの実用化で社会はどうなるか

超長期保存メモリが実用化されることで、具体的にどのような変化が起こるのでしょうか。

まずいえるのは大きな経済効果を生むということです。容量に対応する現在のメモリ価格から想定すると、数十兆円もの市場規模になると想定されています。経済的恩恵以外に、メモリ技術の改革は他の研究領域に対し好影響を与えるとも予測されています。

例えば宇宙分野だと天体情報等のデータ量が膨大ですが、長期に渡るデータ解析を行うことで新たに見えてくることがあるかもしれません。同様に、気象学や地球科学の分野でも多種多様なデータの長期保存によって現代の高度な解析が実現されます。特に重要なのは、後世に貴重なデータが残せるということです。

「超長期」という点にのみ着目した場合、現代ですぐに大きな恩恵は得られません。しかしながら、安定的に今の情報が残せることで未来の人類に対し役立つ情報を渡すことが可能となります。これは、文化や文明を将来に伝えるためにも役立つと考えられています。

 

まとめ

ビッグデータの利用が盛んになったことで、超長期保存メモリへの注目が集まるようになりました。超長期保存メモリの普及は、データ活用を促進するとともに、後世の人たちにも貢献することでしょう。

 

 

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