積層セラミックコンデンサ(MLCC)とは?市場やメーカーについて紹介
コンデンサは目立つ存在ではないものの電子デバイスを動作させる上では決して欠かすことができない非常に重要な存在です。そんなコンデンサにもいくつか種類があり、そのうち主流となっているものが積層セラミックコンデンサ(MLCC)です。
経済産業省が公表した「半導体・デジタル産業戦略」においても、積層セラミックコンデンサは国家の戦略として重要な分野にあたると考えられています。なぜ重要視されているのか、当記事では市場や主要メーカーのことなど、積層セラミックコンデンサについて紹介していきます。
積層セラミックコンデンサとは
積層セラミックコンデンサとは、数あるコンデンサの種類のうちセラミックを非導体の材料として使ったものであり、さらに絶縁層と電極層を多層に重ねたものを指しています。※コンデンサとは電気を一時的に蓄えるための電子部品。電流の流れを制御するためにも使われる。電極2つとその間の絶縁層から構成され、電極で挟む材料の種類によってコンデンサの種類も別れる。
そのため「MLCC (Multi -Layer Ceramic Capacitor)」と表記されることもあります。コンデンサの中でも積層セラミックコンデンサは主流のものであり、スマホからパソコン、テレビ、車載機器など、様々な電子機器で利用されています。特に、デジタル回路の動作安定化やノイズ対策のためには不可欠です。
「積層」であることで何が変わるのか
「セラミックコンデンサ」と「積層セラミックコンデンサ」はその名称から分かるように、積層しているかどうかの違いがあります。
そこで単なるセラミックコンデンサは、セラミックの絶縁層の両面に電極を付けたシンプルな構造をしているのに対し、積層セラミックコンデンサは複数の絶縁層と電極層を交互に積み重ねた構造をしています。性能としては積層セラミックコンデンサの方が優れています。比較的大きな容量を持つものが多いですし、容量を大きくしつつもサイズは小型化が実現可能です。ただしコストに関しては単層からなるセラミックコンデンサの方が低いです。
その他のコンデンサとの違い
コンデンサには他にも色んな種類があります。簡単に次の表で紹介します。
コンデンサの種類 |
絶縁体 |
特徴 |
セラミックコンデンサ |
セラミック |
小型・軽量、かつ高い静電容量、高周波特性も良い。低コスト。 |
電解コンデンサ |
アルミニウムやタンタル |
容量が大きい。サイズは大きい。高温や高電圧に弱い。タンタルはアルミ電解コンデンサよりも大容量 |
フィルムコンデンサ |
プラスチックフィルム |
高周波特性が良く、寿命も長い。小型・軽量化は難しい。高容量化が難しい。 |
電気二重層コンデンサ |
炭素系活物質や有機電解質 |
大きな容量を持つ。 |
積層セラミックコンデンサ産業・市場
積層セラミックコンデンサはスマホやパソコンなどを筆頭に、家電、EVなどでも広く使用されている重要部品です。重要度が高い分野であることから各国が製造基板の確保を進めています。日本においては同分野について高い競争力を持つ企業が多く、この分野が強みであるともいえますが、政策において今後も競争力強化および技術流出防止に取り組むことが必要と考えられています。
また、積層セラミックコンデンサは他のコンデンサと比べても高い成長率を持っており、市場はさらに拡大の傾向を示しています。特にEV・自動運転や5G向けに需要が増していることが関係しているといわれています。
主な積層セラミックコンデンサメーカー
積層セラミックコンデンサのメーカーとして世界トップクラスに位置しているのは次の企業です。これらのメーカーは、2021年度において、出荷金額ベースで見た世界シェアの多くを占めています。
- 村田製作所
日本を代表する著名な電子部品メーカー。MLCCの分野でも世界シェアトップを誇る。同社のMLCCは、高品質・高性能なことで知られており、スマホ・タブレット・パソコン、その他家電から自動車、産業機器にいたるまで幅広く使われている。
- SEMCO
韓国の電子部品メーカー。村田製作所に次ぐ世界シェア2位を誇る。小型・軽量かつ高性能なMLCCを世に出している。
- 太陽誘電
日本の電子部品メーカー。耐圧性の高さ、高い信頼性を持つMLCCを作る。
- Yageo
台湾の電子部品メーカー。柔軟な生産体制を持ち、高性能なMLCCを低コストで製造する。
- TDK
日本の電子部品メーカー。豊富な製品ラインナップを持ち、高周波特性にも優れた高性能なMLCCを提供している。
このように、世界シェアトップクラスの企業の中に日本企業が割合多く存在しており、積層セラミックコンデンサにおける日本の強さがうかがえます。
まとめ
積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、現代の電子デバイスにとって欠かせない構成要素です。その積層という構造が高い容量と小型化を実現する上での大きな鍵を握っており、その市場は今後も拡大を続けると見られています。そのため積層セラミックコンデンサの分野において自律性を持つことは安全保障の観点からも重要なことであり、政府も競争力強化等に取り組む必要があるとの考えを示しています。