半導体部品の製造に欠かせない「ウエハー」について
半導体産業において、その製造工程は「プロセス」と呼ばれます。ここではこの半導体プロセスにおいて基本となるシリコンウエハーについて、これが何者なのか、作り方、特徴など、概要を解説していきます。
シリコンウエハーとは
「ウエハー」とは、薄く平たいものであり、特に半導体プロセスにおいてはシリコン単結晶でできた薄い板のことを指して呼びます。非常に薄く小さい板であり、多くは円形、直径は200~300㎜、厚さ750㎛ほどです。
ゲルマニウムなども同じ半導体としてウエハーにも使用されていましたが、シリコンの方が地球上に多く存在しており、さらに特性も優れており扱いやすかったことからウエハーの主流となっています。
シリコンウエハーの作り方
シリコンウエハーの作り方にもいくつかの手法があります。1つは「チョクラルスキー法」、もう1つは「フローティングゾーン法」です。前者は大規模集積回路(LSI)でよく用いられており、後者はパワー半導体でよく用いられています。
チョクラルスキー法はCzochralski(チョクラルスキー)という開発者の人名が由来になっていますが、製造過程で、融解したシリコンを引っ張り上げるため「引き上げ法」と呼ばれることもあります。
ただ、地球上にあるシリコンは「珪石」と呼ばれる鉱石として存在しており、これは「SiO2」と表記されるようにシリコンの酸化物です。そこでシリコンの多結晶としてその純度を高める作業を先に行っていなければなりません。これにより純度を99.999999999%にまで上げます。
半導体は不純物がほんの少しでも入っていると電気特性が大きく変化してしまいますので、意図的に不純物半導体を生成する場合でなければ、99.999999999%という相当に高い純度にしなければならないのです。
そのために、一度珪石を還元した上でガス状にしています。そして多結晶シリコンロッドを作っています。
引き上げ法はここからの話です。多結晶シリコンを石英るつぼの中で1000℃以上にまで高めて融解。引き上げるための軸を回転させつつ融解シリコンを持ち上げていきます。そうすると円柱状の(シリコン)インゴットが出来上がりますので、これを薄く切り出していきます。表面を研磨するなど、後処理も必要ですが、とりあえずここまででウエハーとしての形が出来上がります。
なお不純物を添加させる場合には、シリコンを融解する段階で必要量を投下することになります。
微小粒子を減らしたクリーンルームでプロセスを実施する
シリコンウエハーの上に集積回路を作っていきますが、非常に小さな領域に配線をしていくことになるため、微少な粒子であっても大きなゴミとなります。配線を行う際、形状不良を招くことがありますし、パターンが断線を起こすこともあります。
このようなウエハー上の微小粒子を「パーティクル」と呼び、良品を安定的に製造するためにはこのパーティクルを減らさなければなりません。
そこで重要なのは、製造の現場の空気中に浮遊するパーティクルを少なくし、クリーンルーム(無塵部とも呼ばれる)でプロセスを実施するということです。
クリーンルームにするためには、空気を何回もフィルターにかけ、何度も濾すようにしてパーティクルを除いていきます。クリーン度は製品の品質に関わってきますので、常に室内のパーティクルの程度はモニタリングされます。専用の測定装置で計測しつつクリーン度が保たれます。
当然、作業員もクリーンでなければなりませんので、入室前にはエアシャワーを浴びます。
金属汚染や有機汚染にも注意
空気中に浮遊するゴミのほか、ナトリウムやカリウムといったアルカリイオン、そして金属汚染なども品質に大きく影響します。パーティクルの場合はどちらかと言えば物理的な障害物としてシンプルなパターン破壊などを招いていましたが、こちらには電気特性を変えてしまうおそれがあります。
抵抗率が変わってしまうことがありますので、表面のパーティクルのみならず、金属汚染や有機汚染に関しても一定以上の洗浄度が求められます。
しかも問題なのは、製造の様々な過程で汚染が発生し得るということです。集積回路を作っている際中も汚染されてしまうことがありますし、製造装置からの汚染、ライン上での汚染なども起こり得ます。
その他以下で挙げるような様々な外部要因により、品質の低下が起こります。
- 部材からの不純物の付着
- ウエハーを搬送する際に生ずる静電気
- ウエハーに照射するビームによる損傷
- 装置等の振動
- 工場内の設備や電源ラインから受ける電磁波
そこで、何度も洗浄を繰り返します。なお、洗浄後は必ず乾燥もセットで行わなければなりません。ウエハー表面が酸化してしまうからです。こうして、洗浄度に細心の注意を払いつつ、ウエハーおよび半導体素子は作られていきます。
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