【半導体製造】洗浄装置と乾燥装置の種類と処理方式の概要を解説
前工程では、ウエハは各プロセス装置から次の装置へと移動する際に必ず洗浄を行います。そのため前工程において最も使われるのが洗浄装置であるとも言えます。
また、ウエハについては、必ず乾燥をさせた状態で洗浄装置から出すという「ドライアウト」の考え方に基づいて扱われます。よって、洗浄装置とともに乾燥装置についても理解しておくことが大切です。
洗浄装置の種類
洗浄装置は、多数の薬液や純粋の供給を行う装置やドライエアの供給を行う装置といった「供給系」、温度・パーティクル・薬液濃度などを管理する「制御系」、そのほか廃液処理などを行う「処理系」、ウエハの搬送を行う「搬送系」などから構成されます。
しかし具体的な内容としては洗浄装置によって異なっており、「バッチ式」と「枚葉式」という分類により大きく異なっています。
バッチ式洗浄装置
前工程の中でも洗浄および乾燥は回数の多いプロセスですので、ウエハ1枚あたりにかかる時間は短くすることが大切です。この点強みを持っているのがバッチ式洗浄装置です。バッチ式とは複数枚のウエハをまとめて処理するタイプの装置のことで、通常、キャリアに収納できるウエハは25枚あるいは50枚とされています。
一括処理できるほどチップの製造にかかるコストがカットできるため、できるだけ多い枚数が処理できた方が良いということになります。このようにバッチ式はスループットの面で優れているのですが、設置面積が大きいことと薬液等の使用量が多くなってしまうこと、装置の価格面に難がある、といったデメリットも持ちます。
また、バッチ式にはさらに「多槽式」と「単槽式」があります。多槽式は薬液層とリンス層がシーケンスに従って並んだタイプで、単槽式はこれらの槽が一つずつのタイプを言います。多槽式ではよりバッチ式であることの強みを活かすことができるのですが、装置が大型化してしまい、空調の負荷も大きくなってしまうなどのデメリットも生じます。これに対し単槽式では薬液等の供給および排液を毎度行わなければならず、薬剤に対するコストが大きくなってしまいます。
枚葉式洗浄装置
枚葉式洗浄装置はバッチ式とは逆にウエハを1枚ずつ処理していくタイプです。
メモリなど、少ない種類の製品を大量に生産するメガファブなどではバッチ式のメリットが大きく活かせるのですが、特定用途向けの製品、少量多品種の生産を行う場面ではデメリットの影響が大きいという問題があります。そこで省スペース、処理に対する高い柔軟性などに強みを持つ枚葉式が採用される例も出てきています。
バッチ式に比べスループットは劣るものの、薬液使用量、価格面でも利点がある洗浄装置のタイプと言えます。また、バッチ式との大きな違いとして「ウエハに薬液や純粋を付ける手法」も挙げられます。バッチ式では槽に浸す「ディップ式」と呼ばれる手法が採用されますが、枚葉式ではノズルから吹き付ける「スプレー式」が採用されています。
乾燥装置の種類
「ドライイン・ドライアウト」が原則ですので、洗浄の後は必ずウエハを乾燥させます。そこで乾燥装置もプロセスにとって重要な要素となります。そして洗浄同様、乾燥の方法にもいくつかのタイプがあります。
スピン式乾燥装置
ウエハを高速回転させて水分を吹き飛ばすタイプが「スピン式乾燥装置」です。ウエハを回転させたときの遠心力で水分を吹き飛ばすのです。
このタイプは装置の構造が単純で、価格も安価、スループットが大きいというメリットが得られる一方で、回転部が多いことから発塵源になってしまいやすく、また静電気が発生するというデメリットも持ちます。
IPA式乾燥装置
「IPA式乾燥装置」は、水分をIPA、つまりイソプロピルアルコールの蒸気で置換し乾燥させるというメカニズムで乾燥させるタイプの装置です。
IPA乾燥方式は、スピン方式のように高速回転させる機構が必要なく、パターン部に有利とされ、静電気が発生することもありません。しかしながら、引火性のIPAを使用すること、また有機物残留の課題も残ってしまいます。
その他の乾燥装置
新たに開発が進められている「マランゴニ乾燥装置」というタイプもあります。マランゴニとは表面張力に関連して生じるマランゴニ力に由来しており、この方式ではIPAの使用量が少なく、ウォーターマークを抑えられるというメリットが得られます。
さらに「ロタゴニ乾燥装置」というタイプもあります。こちらもマランゴニ力を使うのですが、これにスピンも加え、枚葉式に適合させた乾燥方式となっています。マランゴニ乾燥装置同様、環境負荷の小ささにメリットがあります。
まとめ
洗浄や乾燥は、それ自体モノを生み出すプロセスではありませんが、半導体製造の工程全体から見て非常に重要なプロセスであることに変わりはありません。
また近年のトレンドでもある環境負荷への対策とも関りが深く、より環境負荷に配慮された手法の開発が進んでいます。そのため今後は処理の効率に加え、より環境に良い装置が登場してくることでしょう。
関連ページ:⇨次世代パワー半導体素材SiCについて
関連ページ:⇨【脱炭素社会の実現】エネルギー・環境問題に向けた注目の研究開発分野4選
関連ページ:⇨世界の半導体メーカー企業ランキング10社を紹介!
関連ページ:⇨弊社の製品・技術をご紹介