半導体関連製品が外為法改正で輸出規制の対象に!ロシア以外の第三国への輸出にも要注意
グローバル化が進み、様々な業界で外国との取引が行われるケースが増えてきています。ただ、外国との取引には「外為法」が適用されることがありますので、同法による規制内容に注意しなければなりません。半導体関連についても輸出入は常時行われており同法への留意は欠かせません。
さらに2022年3月にはウクライナ情勢を受け同法の改正がなされています。そこでこの記事ではその改正内容、とりわけ半導体関連に関することを解説します。
ウクライナ情勢を受けた外為法改正の概要(2022年3月施行)
法律は社会情勢に合わせて変化するものです。外為法(正式名称:外国為替及び外国貿易法)についても2022年3月に改正法が制定、そして施行されています。
今回の改正法はロシアによるウクライナ侵攻を背景としたものであり、ロシアおよびベラルーシに対する制裁措置としてなされました。この制裁措置を通して、ウクライナ情勢の問題解決を目指すことが目的といわれています。
改正外為法の概要は以下です。
- 一定品目のロシア等に向けた輸出の禁止
(半導体や炭素繊維、工作機械などが輸出禁止の対象になった)- ロシア等の特定団体に対する輸出の禁止
(ロシア国防省やロシアの航空機メーカーなどが対象の団体)- ロシア等の軍事力強化に繋がる汎用品の輸出の禁止
(半導体や通信機器等の汎用品が対象)- ロシア向け石油精製用装置等の輸出の禁止
ロシアのみならずベラルーシに対する輸出等も同等に禁止されていますし、ドネツク人民共和国およびルハンスク人民共和国への輸出も禁止されています。
さらに、これらに該当しない第三国に対する輸出でも規制対象となる可能性がありますので、要注意です。例えば当該第三国からロシア等に再輸出するケースなどでは輸出禁止の対象となり得ます。
外為法とは
そもそも「外為法」とは何か、ということも簡単に説明しておきます。
外為法の目的
外為法は、日本と外国との間でやり取りされる「資金」「財産(モノ)」「サービス」などを対象に適用される法律です。同法第1条に規定されているように、「対外取引の正常な発展」「日本の経済や国際社会の平和・安全の維持」などを目的としています。
この法律は、外国為替、外国貿易その他の対外取引が自由に行われることを基本とし、対外取引に対し必要最小限の管理又は調整を行うことにより、対外取引の正常な発展並びに我が国又は国際社会の平和及び安全の維持を期し、もつて国際収支の均衡及び通貨の安定を図るとともに我が国経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
引用:外国為替及び外国貿易法 第1条(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000228)
この目的を達成するため、様々な規制がかけられています。
外為法による規制
外為法では、特定の国や地域に対する特定「貨物」の輸出入をするために、経済産業大臣の許可または承認が必要になることを定めています。また、「役務取引」についても規制対象とされています。役務取引とは「同法による許可を受けなければならない特定技術につき特定国に対する提供を目的とする取引」などを意味します。
今回の法改正では貨物および役務取引どちらも規制対象とされています。ただし経済制裁措置として規制をかけるには、以下いずれかの要件を満たさなければなりません。
- 国際約束の誠実な履行のため必要と認められる
- 国際平和への寄与のため特に必要と認められる
- 日本の平和・安全維持のため特に必要と認められ、対応措置を講ずるとの閣議決定が行われた
これまでも経済制裁措置がとられてきた例はいくつもあります。例えばタリバン関係者やテロリスト、北朝鮮のミサイル計画に関連する者、クリミア併合に直接関与している者など、平和を脅かす行為に関与した者を対象になされてきました。
半導体関連製品も改正外為法による規制対象
今回の改正外為法では、取引の相手方の制限、取引対象となる貨物や役務の制限がかかり、その影響の範囲は比較的広いです。半導体関連で規制対象となっているものを以下に挙げます。
- 一定品目(国際輸出管理レジーム対象品目)の輸出について
武器、化学兵器、ミサイルのほか、先端材料、電子計算機、センサー等、通信、エレクトロニクスなど広い分野が対象
半導体関連では以下電子制御用半導体素子
半導体製造装置
半導体基板
- 軍事力強化に繋がる汎用品について
以下のうち、経済産業大臣が省令で定めるものが対象半導体素子や集積回路、半導体物質、そしてこれらの組立品の製造用装置や付属品など
半導体素子や集積回路、半導体物質、そしてこれらの組立品の試験装置や検査装置とその附属品など
- 役務取引について
集積回路や半導体製造装置、半導体試験装置などの設計・製造・使用のために設計したプログラムなど
集積回路や半導体製造装置、半導体試験装置、レジストなどの設計・製造・使用のための技術(プログラムは除く)
これら貨物等の輸出に関しては原則として不承認との扱いになりましたが、人道支援の目的などであれば承認の余地があることも示されています。また、ロシア等に対するあらゆる輸出が禁じられているわけではありませんので、規制対象として選定されたもの以外についてまで輸出承認申請をする必要はありません。
規制対象となっているものなど、改正法の詳しい情報はこちらのページを参考にすると良いでしょう。
参考:外国為替及び外国貿易法に基づく輸出貿易管理令等の改正について(https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220315007/20220315007-1.pdf)
まとめ
ウクライナ情勢を受けてなされた外為法の改正内容について紹介しました。半導体関連製品は日常用品のみならず幅広い用途で使用することができるため、今回の規制対象に含まれています。外国との取引が盛んな企業は、再輸出による規制がかからないかどうかなど、よくチェックする必要があるでしょう。
関連ページ:⇨TSMCとはどんな企業?世界トップの半導体企業を紹介
関連ページ:⇨半導体関連の研究開発トレンド6選。注目のテクノロジー
関連ページ:⇨世界の半導体メーカー企業ランキング10社を紹介!
関連ページ:⇨弊社の製品・技術をご紹介