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半導体製造で利用される貴ガス(希ガス)とは?ウクライナ情勢の影響など解説

半導体製造、その他様々な産業目的で「貴ガス(希ガス)」が利用されています。ここでは貴ガスとはどんなものなのか、どのように半導体と関わっているのか、そして輸入に関する問題などにも言及していきます。

 

貴ガス(希ガス)とは

貴ガスは「希ガス」または「レアガス」と呼ばれることもあります。これは2005年まで英語で「rare gas」と呼ばれていたことに由来します。しかし表記が「noble gas」へと変更されたことに伴い、日本語での表記も「貴ガス」とされることが増えました。

貴ガスの意味ですが、これは元素周期表上の18族に属する以下の元素からなるガスのことを指します。代表的な貴ガスとその特徴を下表に簡単にまとめます。

貴ガスの種類

特徴

ヘリウム

・地球大気の0.0005 %を占める

・鉱物やミネラルウォーターに含まれ、天然ガスと一緒に微量の産出もある

・生産量がアメリカとカタールに偏っており、日本も輸入に依存

ネオン

・貴ガスの中では、アルゴンに次いで空気中に含まれる割合が多い

・他の元素と比較して、反応性に乏しい

・放電により発行するため「ネオン管」に封入する気体として利用される

・工業用途のものは、ロシアでの生産、ウクライナでの精製が多い

・生産、精製拠点の偏りから価格高騰が生じたことがあるため、消費量を抑えたり再利用をしたりする技術開発が進められている

アルゴン

・空気中に含まれる貴ガスとしては1番多い

・他の気体を含めても、窒素や酸素に次いで3番目に多い

・そのため空気から液体の酸素と窒素を分離精製するとき得られる

・反応性に乏しい

・製鋼、溶接、シリコンの製造などに用いられる

クリプトン

・空気の液化、分留により得られる

・白熱電球に封入するなどの利用方法がある

・放電により青白い光を出すことから、写真のフラッシュにも利用される

キセノン

・空気中に含まれる量はかなり少ない

・「キセノンランプ」への封入、エンジンの推進剤などとして利用される

・空気より断熱性能が高いことから複層ガラスに封入する用途もある

 

半導体製造における貴ガス(希ガス)の利用

これら貴ガスは、半導体の製造工程で重要な役割を担っています。

 例えば、半導体集積回路におけるパターンを加工するには「エキシマレーザー」というものが使われます。そしてレーザー光を出すためには内部にガスを入れる必要があるのですが、そのガスとしてネオンアルゴンクリプトンといった貴ガス(厳密には混合ガス)が採用されているのです。

また半導体材料の超高純度シリコン単結晶を製造したり、製鋼したりする場合などの、高温高圧下での工程でアルゴンが用いられたりもします。酸化および窒化を避ける必要があり、窒素の不活性の程度では足りないというケースに使われるのです。他にも、各貴ガスはその性質に応じて様々な側面から半導体製造等に関わっています。

 

ウクライナ情勢が貴ガスの輸入に与える影響

貴ガスに関しては、ロシアとウクライナに依存しているものが多いです。ヘリウムなどの天然資源のみならず、製造する貴ガスに関しても同様です。空気中に含まれる成分を分留して製造するタイプの貴ガスであれば、原理上、どの国でも製造できるのですが、大規模なASU(空気分離装置)が必要です。これは貴ガスがレアガスとも呼ばれていたように、空気中に含まれる割合がごく微量であることがその理由です。

規模の大きなASUが設置されていなければ十分な貴ガスが製造できませんので、その結果、貴ガスの製造拠点は実質一部の国に限られているのです。しかし2022年、ロシア・ウクライナ情勢が急激に変化したため、貴ガスの輸入に大きな影響が出るのではないかと危惧されています。特に問題視されているのがネオン・クリプトン・キセノンです。これらのガスはロシアおよびウクライナに依存しており、実際価格も高騰しているといわれています。

 

貴ガスの貿易に関する今後の見通し

ウクライナ情勢を受け、欧州自動車部品工業会(CLEPA)が自動車部品業界の受ける影響を発表しています。ウクライナ情勢の長期化により半導体やその他部品の供給不足が生じ、さらにエネルギー価格もより高騰していくとの懸念を示しています。

ロシアには世界の自動車メーカー工場、部品メーカー工場の生産拠点が多数存在していることも関係しているでしょう。特に欧州ではウクライナに対する貴ガスの依存度が高く、その影響は大きいと思われます。他方、日本も貴ガスについてロシアやウクライナからの調達が多いものの、他の複数の国からも調達は可能であるとされています。そのため半導体製造に関しては、2022年4月時点で甚大な影響が出ているとまではいえないとされています。

 

まとめ

貴ガスそのものは半導体の材料として構成されているわけではありませんが、その製造過程で重要な役割を担っています。しかもかつて希ガスと呼ばれていたように、レアなガスであるため容易に手に入るというものでもありません。

そのため一部の国に輸入が依存していると、今回のウクライナ情勢のように、政治的な影響を受けて産業にダメージが及ぶことが起こり得ます。様々な材料の利用、様々な工程を経て半導体は製造されますので、単に半導体材料だけが確保できていれば良いという問題ではない点に留意しましょう。

  

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