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有機半導体のバイオ計測技術への応用「ブレインマシンインターフェイス(BMI)」とは

今世界的に注目されている技術の1つに「ブレインマシンインターフェイス(BMI)」というものがあります。成熟した技術ではなく未だ研究段階ですが、将来実用化されれば社会に大きな影響を与えると考えられています。この記事では、BMIとは何か、半導体との関係や近年の研究内容について解説していきます。

 

ブレインマシンインターフェイス(BMI)とは

ブレインマシンインターフェイス(以下、「BMI」)は、脳(ブレイン)からの信号をキャッチし、その情報から機械(マシン)を操作する技術のことをいいます。

人体と機械とを媒介する装置を使うのですが、電気信号を取り扱うため当然そこには半導体も用いられます。しかし人体を対象に信号を読み取ることから、どのような半導体でも良い、というわけにはいきません。ここで有機半導体が活躍します。

 

有機半導体を使ったバイオ計測に基づく技術

BMIでは有機半導体デバイスが用いられます。炭素を重要な構成要素とする「有機物」は無機物と異なった性質を持っており、様々な点で高い柔軟性を持ちます。人体などの生体は有機物として構成されていますし、有機半導体もフレキシブルデバイスとしてバイオ計測に適しているのです。

そこで、これまでも有機半導体を用いたバイオ計測技術により、ウェアラブルな心電計から小型かつ軽量の脳波計の開発が進み、義手や義足のコントロールに応用されてきました。さらに近年では脳波の計測によって疾病を診断するデバイスも、開発が進められています。

 

BMIの研究が盛んになった背景

BMIのみならず、ヘルスケア領域は昔から人々の強い関心を集めていた分野です。同領域に含まれる「バイオ材料」「ナノ医療システム」、そして「バイオ計測」および「診断デバイス」などは世界的にも注目の研究開発分野です。BMIはこのうちの「バイオ計測」と「診断デバイス」の分野に該当します。両分野は、バイオ物質(生体由来物質)の検出や分析技術を薬物・病原菌などに適用するためのデバイス創出をめざす領域です。

例えば、「微量なサンプルからバイオ物質を迅速に特定、そして抽出・分離する技術」「センシングの高速・高感度化」「複数ターゲットに対するマルチセンシング」「ウェアラブルデバイス」「チップ上に人間の臓器等の機能を再現する技術」などが進められています。これらは、生命現象の解明といった基礎研究であると同時に、医療応用、感染症予防に向けたキーテクノロジーでもあります。

昨今だと新型コロナウイルスによるパンデミックが生じたことで、世界的にウイルス検出デバイスの開発が活発になっています。しかし、このパンデミックが起こる以前から人間は常に病気やウイルスとの闘いを続けていたのであり、これまでも同分野は世界中で研究開発の競争が展開されていました。さらに、日本のように超高齢社会に入った地域では生活習慣病の抑制が重要な課題となっています。この問題を解決するためにもウェアラブルデバイスの活用、バイオ計測技術等の役割は大きいといえるでしょう。

 

ブレインマシンインターフェイス(BMI)に関する研究状況

それではBMIに関して現在どのような研究状況にあるのか、比較的研究開発が進んでいるアメリカと、日本について簡単に紹介します。

 

アメリカがBMI研究を牽引している

BMI研究はアメリカで特に進んでいます。アメリカ国防高等研究計画局「ダーパ(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)」では、脳や神経に関連して様々な研究プログラムが進められているのですが、そのうちの1「N3」と呼ばれるプログラムが世界のBMI研究を牽引していると評価されています。

N3とは「Next-Generation Nonsurgical Neurotechnology」の意です。同プログラムでは健常者向けて高性能なBMI開発しており、外科的移植を行う必要のない、非侵襲の統合デバイス開発を目指しています。

 

日本でも成果が出ている

日本でもBMIに関する成果は出ています。内閣府主導の革新的研究開発推進プログラム、「脳情報の可視化と制御による活力溢れる生活の実現」の一環で進められています。同プログラムでは、人間が両腕を使いながらもこれに並行して脳でロボットアームを操作するという手法を実現しました。このときのロボットアーム操作にBMIが利用されているのです。これは世界でも初の成果です。

従来のBMIだと障害者用など用途が限定的でしたが、この成果により、BMIの用途が拡大できるとの期待が持たれています。さらに人間のマルチタスク能力、認知能力の解明やその向上にも役立つのではないかともいわれています。

 

ブレインマシンインターフェイス(BMI)の課題

実用に近づいているBMIもありますが、まだ解決すべき課題も多く残っています。

 例えば、読み取りの解像度を高める埋め込み型デバイスに関してはデバイスの侵襲性が研究開発の妨げとなっています。非常に高い解像度で神経脳活動を記録するには、現状、頭蓋骨にデバイスを埋め込まなければなりません。人間を対象にこのような研究を行うのは倫理的な問題が生じますし、埋め込みにより生じる感染・合併症といったリスクも伴います。

 

また、軍事利用の問題もあります。上に挙げたダーパも軍事研究を念頭に置いた機関であり、N3プログラムの内容としても、戦場における脳間通信、神経接続を介する機器のコントロールを含んでいます。

 

まとめ

BMIを実現する上では、バイオ計測や診断デバイスの研究開発、さらにその基礎にある有機半導体デバイスの研究開発も欠かせません。課題も多く残るBMIですが、実用レベルにまで進めば障害者による義手や義足の高度制御が期待できます。さらに、アルツハイマー病などの患者の生活を支援する技術としても社会に貢献することでしょう。

 

 

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