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半導体製造におけるエッチングとは?手法の種類や等方性・異方性などの性能についても解説

半導体チップの回路パターンを形成するにあたっては、通常、いったんウエハ上にレジストを塗布することになります。その後多段階的に加工を施して1つのチップが完成していくのですが、その過程で、不要なレジストを取り除く作業が発生します。この作業は「エッチング」と呼ばれるのですが、その手法にも色々あります。


この記事では、半導体製造におけるエッチングの役割や具体的な手法、手法別の特徴などを説明していきます。

 

エッチングとは

「エッチング」とは半導体製造の場面でのみ使われる用語ではありません。化学薬品などによる腐食作用を利用した、表面加工の技法を指しています。要は、特定の不要部分のみを取り除く加工のことです。

半導体製造などの半導体工学分野においては、ウエハの薄膜を形状加工する微細加工技術として応用されています。特に半導体チップを製造する過程では、半導体ウエハに酸化膜の薄膜を形成し、レジストの塗布、回路パターンの露光後、不要となった薄膜を除去するときにエッチングが行われています。

 

エッチングの手法

半導体製造におけるエッチングの手法には、大きく①液体を利用したウエットエッチングと、②プラズマやガスを利用したドライエッチングの2つに分けられます。

 

ウエットエッチングについて

まずは「ウエットエッチング」について説明していきます。ウエットエッチングでは、エッチング液でウエハに化学反応を起こさせて不要部分を取り除きます。ウエハに使われている半導体材料に応じたエッチング液が用いられます。例えばSi(シリコン)の場合、エッチング液にはの混酸が用いられます。硝酸がSiの酸化反応を、フッ酸は生成された二酸化ケイ素の溶解を担います。

 

ウエットエッチングの特徴は次の通りです。

  • 等方性
    除去したい面方位によらず、全方向に向かって同一速度でエッチングが進行する。本来、レジストに沿う形でウエハ上にある被エッチング材料を除去していくべきところ、等方性があるとレジストに回り込む形で必要以上にエッチングが行われる。そのため微細パターンを加工するには向いていない

  • 生産性の高さ
    複数枚のウエハを液層に浸して処理するため、全体としての処理速度が早く、生産性が高い。品質も安定しやすい

  • 低コスト
    薬液やエッチング装置が比較的低コストで手に入る。装置の構成もシンプルなためランニングコストにも優れる

 

ドライエッチングについて

続いて「ドライエッチング」についてです。ドライエッチングでは、プラズマや反応性ガスでイオンを生成し、そのイオンを当てて不要部分を取り除きます。ドライエッチングはさらに下表の3種に分けることができます。

ドライエッチングの種類 詳細
ガスエッチング

HF(フッ酸)などの蒸気を用いてウエハ上の酸化膜を除去します。ウエットエッチング同様等方性がある点に注意が必要です。

スパッタエッチング

Ar(アルゴン)などの不活性ガスのイオンを使って物理的にエッチングする手法です。ArやHeなどのガスにプラズマを発生させることで[Ar+]や[He+]のイオンなどを生成し、これをウエハ上の酸化膜にぶつけて不要部分を取り除いていくため、等方性ではなく異方性を持ちます。

イオンエッチング

スパッタエッチングのようにイオンを照射する物理エッチングに加え、化学的なエッチングも行います。「反応性イオンエッチング」「RIE」とも呼ばれ、ドライエッチングの中でも主流の手法です。異方性を持ちます。

エッチングでは異方性が重要

エッチングのやり方によって等方性・異方性の違いがあります。

等方性のあるエッチングではマスキング層であるレジストのアンダーカットを起こし、下面を丸く腐食してしまいます。しかし現代のプロセスは微細化、高集積化が進んでおり、エッチングに対しても非常に高い精度が求められます。そのため等方性は好まれません。


これに対し異方性のあるエッチングは、レジストに対して垂直の腐食を起こします。不要なカットを起こさず、微細加工や高集積化にも向いています。なお、エッチングにおいて重要なのは異方性だけではありません。

「選択性」も大切です。ここでいう選択性とは、狙った箇所だけを選択的に除去できる性質のことです。エッチングの結果、マスキング層にダメージが入ってはいけませんし、被エッチング層のさらに下部まで取り除くことになってはいけません。堀の深さなどを上手くコントロールできる選択性も重要なのです。基本的にはエッチングの速度を把握すること、適切な時間だけエッチングを行うことで対応します。

 

まとめ

半導体チップを製造する過程では、ウエハ上での膜の形成やその除去などが繰り返し行われます。このうちの除去を担うのが「エッチング」です。薬液に浸して化学反応を起こさせるウエットエッチングや、ガスやイオンを用いったドライエッチングなどの手法があり、それぞれに特徴が異なっています。装置にかかるコストなどの違いもありますが、重要なのは等方性・異方性の違いや、選択性です。これらエッチングの性質が半導体チップの性能にも関わってきます。

 

 

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