エッチング装置の技術や市場の動向、有力企業について紹介
半導体デバイスを製造するには、多段階の加工が必要です。「エッチング」もプロセスの1つですので、エッチング装置は半導体業界、ひいては現代社会に欠かせなくなっています。当記事ではそんなエッチング装置の技術的な話題、それから市場の現状などを紹介します。
エッチングの技術について
成膜されたウエハに対してリソグラフィを行うことで、電子回路のパターンが転写されます。そのパターンに沿って薄膜を削っていく作業を「エッチング」と呼びます。エッチングには「ウェットエッチング」と「ドライエッチング」の2種類があり、それぞれに特徴が異なります。また、これら2種類を理解する上ではエッチングの“方向性”についても知っておく必要があります。
等方性と異方性
薄膜を削る方向に対応して「等方性エッチング」と「異方性エッチング」に分けられ、それぞれ次のような特徴を持ちます。
- 等方性エッチング
薄膜に対して、あらゆる方向から削り取りを行う。示されたパターン以上に薄膜を削り取ってしまうことがある。
- 異方性エッチング
薄膜に対して、一定の方向でのみ削り取りを行う。パターンに沿って高い精度で薄膜を削り取ることができる。
ウェットとドライ
ウェットエッチングは、前項で示した「等方性」を持ちます。これに対し、ドライエッチングは「異方性」を持ち、高い精度で薄膜を削ることができます。そこで、2種類のエッチング方法があるとはいえ、高精度の製造が求められる昨今において大半はドライエッチングが占めています。
エッチング装置について
ドライエッチングでは、「反応性イオンエッチング装置」を用いるケースが多いです。この装置では、真空状態にした空間にウエハを置き、そしてガスを注入。その空間内には電極を置いておき、プラズマを発生させます。ガスが反応を起こしイオンを発生しますので、そのイオンを使ってウエハの表面を加工していく、という仕組みになっています。この仕組みは“異方性”によるエッチングであり、細かい回路パターンにも対応が可能です。
一方、“等方性”のあるウェットエッチングにも利点はあります。高精度のドライエッチングに比べると低コストで生産することができ、大量生産にも向いています。粗い削り取りでかまわない場面など、特定のシチュエーションであればウェットエッチングも採用されています。
エッチング装置と成膜装置の共通点
エッチングと成膜は異なる半導体プロセスです。しかし各工程を担う装置の仕組みは共通点も多く、各装置の市場で優位に立っているメーカーもおおむね共通しています。例えば日本の半導体製造装置メーカーである「東京エレクトロン」はその1つです。国内のみならず、世界でもトップクラスのシェアを誇ります。その他有力なメーカーは、アメリカの「アプライドマテリアルズ」と「ラムリサーチ」です。これら3社は、エッチング装置と成膜装置の市場において支配的な位置に存在しています。
技術や装置面では、次のような共通点を挙げることができます。
- プラズマ技術
エッチングでも成膜でも、プラズマを利用した手法がある。
- 真空チャンバー
どちらの装置でも減圧を行うことがあり、真空チャンバーが必要になる。
- マテリアルハンドリング
どちらもクリーンルーム内で実施する必要があり、ウエハを移動させるためのマテリアルハンドリングシステムが必要となる。
- ガス供給システム
化学反応を起こさせるため、プラズマを発生させるため、ガスが必要になる。そこで、真空チャンバー内にガスを供給するシステムが必要。
エッチング装置市場の現状
エッチング装置市場は、2023~2031年にかけて、年率7.6%で拡大していくと予測されています。また、原子層エッチング技術が市場に大きなビジネスチャンスをもたらし、自動車や医療、防衛に至るまで幅広い産業にエッチング技術の進展が影響していくとも考えられています。各メーカーの現状などを次に示します。
各メーカーの動向
現状においてはラムリサーチの存在が特に大きなものとなっています。エッチングのメインはドライエッチングであり、ドライエッチングに特に強みを持つのがラムリサーチであるからです。ドライエッチング装置市場に限れば、市場の半分ほどを占めるシェアを持ち、業界トップに君臨しています。上述した反応性ドライエッチングの技術以外にも、原子単位で削り取りを実行する技術、その他メタルエッチングや絶縁膜エッチングなどの技術も高いレベルにあります。
※メタルエッチング:トランジスタに搭載する素子の加工など、電気配線の形成に関わる加工技術
※絶縁膜エッチング:導体を保護する層(絶縁層)を形成するための加工技術
Kiyo®シリーズ製品 |
導電体を精密に、高い再現性で形成する。原子層エッチング機能によって、精度を落とすことなく高い生産性を発揮できる。 |
Flex®シリーズ製品 |
絶縁膜エッチングを実行する装置。 微細な領域においても高い均一性と再現性、可変性を実現する。 |
Sense.i™製品 |
Kiyo®シリーズ、Flex®シリーズの技術を進化させた製品ファミリー。 機械学習を通して生産の最適化を図る。メンテナンスも自動化され、労働コストおよび停止時間の削減にも寄与する。さらに装置の占有スペースも削減されている。 |
出典:ラムリサーチ(https://www.lamresearch.com/ja/products/our-products/)
アプライドマテリアルズの場合、高度な装置の開発・販売はもちろんですが、これら装置の設置サポートやメンテナンスに関するサービスに注力しています。東京エレクトロンも近年新たな開発拠点・製造拠点を積極的に設けており、事業拡大に向けた取り組みを進めています。
まとめ
エッチング装置に関してはラムリサーチやアプライドマテリアルズ、そして日本の東京エレクトロンが主なプレイヤーとして世界から注目を集めています。エッチングに関する技術の向上、新たな装置の登場が半導体業界を今後も支え
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