中国の半導体産業と政府の施策について~これまでの施策内容と今後の狙い~
半導体産業は地政学上も重要な立ち位置を確立している分野です。中国政府も半導体産業に注力しており、様々な施策を講じてきました。そして現在も継続して投資を行っており、今後の動向に注目が集まっています。この記事では、そんな中国政府が半導体産業に関してどのような施策を打ち出してきたのか、現在どのような施策を進め、何を狙いとしているのか、これらをまとめていきます。
中国がこれまでに打ち出してきた施策
半導体産業の発展は、経済全体の発展を促すだけでなく、安全保障上も必要なことであると捉えられています。そこで以下のような施策が実施されてきました。
第12次5カ年計画(2011年)
中国では、国民経済および社会発展を目的とした政府の方針が「第〇次5カ年規画網要」として5年おきに公表されてきました。中国における経済発展戦略の最重要指針ともいえる存在です。一般には「5カ年計画」と呼ばれたりもします。そして2011年から2015年までを対象とした「第12次5カ年計画」では、次の点に力を入れることが示されました。
- 次世代情報技術等の戦略的新興産業
- 集積回路やハイエンドソフト、ハイエンドサーバーなど
これらが重点分野として掲げられ、実際、2015年には集積回路産業の売上高が、2010年比で2倍以上にまで拡大したという効果が得られています。
国家 IC 産業発展推進ガイドライン(2014年)
5カ年計画とは別に、2014年には「国家 IC 産業発展推進ガイドライン」が打ち出されています。このガイドラインでは、IC産業の重要性を評価し、ICの輸入依存が競争力や情報セキュリティにおけるリスクになっていると指摘。中国内部での設計から製造など、半導体サプライチェーン全体の発展に注力するとの方針が示されました。
中国製造2025(2015年)
2015年には、「中国製造2025」が公表されました。2025年までの、中国における製造業全体の発展戦略を示したものです。以下の内容がポイントであるといえます。
- 重点分野のトップに「次世代情報技術産業」が掲げられた
- 集積回路と専用設備の発展、集積回路の設計水準の引き上げなどの目標が定められた
また、特に着目すべきは国内の半導体自給率を向上させようとしている点です。
国内で新産業や雇用を創出すること、2049年には製造業においてトップの国家になるという意欲を世界に示したのです。
第13次5カ年計画(2016年)
2016年には、5カ年計画が更新され、第13次5カ年計画が公表されました。第13次におけるポイントは次の通りです。
- 先進的半導体のイノベーションおよびその産業化を推進すること
- 重大専門プロジェクトの中に「中核電子デバイス」「ハイエンド汎用チップ」などが盛り込まれた
戦略的新興産業の発展を政府が支援し、集積回路の産業を育成する方向性が示されました。また新たな成長ポイントとして、先進的半導体などの「新興フロンティア分野」を掲げたことが注目を集めました。第13次5カ年計画の効果もあって、インフラ水準の向上(高速鉄道、4Gなど)、科学技術のイノベーションが世界先進レベルに到達、国民の生活水準の向上(個人所得の伸び、地域の所得格差是正など)といった成果が得られています。
第14次5カ年計画(2021年)
2021年に公表された第14次5カ年計画では、集積回路に関する取り組みの方針が明らかにされました。集積回路に関して次の発展に注力することが具体的に示されています。
- 集積回路設計ツール
- 重要材料の研究開発
- 先進的ストレージ技術の向上
- ワイドバンドギャップ半導体
また、第13次の5カ年計画に引き続き、重要政策のトップに「イノベーション」が掲げられたことも注目されました。
中国の半導体産業の現状と今後の狙い
様々な施策が打ち出され、重要な施策もいろいろと挙げられていますが、中国の今後の狙いとして強く主張されているのは「自給率の向上」です。ここ10年の動向を見てみても、半導体生産能力は急成長しており、設計能力も大きく向上しています。特にファーウェイ傘下のハイシリコンが高い設計能力を有しており、売上高で世界のトップクラスに君臨しています。
ほかにも複数の中国企業が世界上位に位置しています。しかしICの自給率の状況は芳しくなく、ICにおける貿易赤字が拡大したという背景もあります。半導体材料や半導体製造装置などにも強くなく、アメリカや日本などによる輸出制限の影響を強く受けてしまうことが問題視されています。そこで中国政府は国内企業に対する支援をさらに強化する方針を示し、税の優遇、中長期貸出の強化などを具体策として進めています。
まとめ
中国政府は、自国の半導体産業発展に向けて長い間多様な施策を講じてきました。近年の動向としては、中国国内の自給率向上に注力していることがポイントであるといえます。中国企業の成長は日本国内にも影響を与えうるため、今後どのように中国の半導体産業が発展していくのかチェックしておくと良いでしょう。
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