成膜装置の技術や有力企業が提供する製品について
半導体は私たちの日常生活に深く影響を及ぼしています。スマホやパソコン、自動車に至るまで、あらゆる場面で電気駆動する機器に触れており、それらには半導体が組み込まれています。そしてこの半導体デバイスを製造するために欠かせないのが半導体製造装置であり、そのうちの1つに「成膜装置」があります。チップを製造する過程ではウエハ上に微細な膜を形成する必要があり、その成膜で使用されます。当記事ではこの成膜装置に着目し、成膜装置市場や近年の技術に関することなどを解説します。
成膜装置の種類
成膜の方法には大別して4つの種類があります。①CVD、②ALD、③熱酸化法、④スパッタリングの4つです。それぞれ必要な技術が異なっており、使用される装置も同じではありません。
CVD(Chemical Vapor Deposition)
CVDとは「化学気相成長」のことで、常圧にて化学反応を起こさせるCVD装置と、減圧して化学反応を起こさせるCVD装置に分けられる。
- 常圧型:耐熱性の低い膜に向いている
- 減圧型:処理時間は長くなるが高精度で成膜できる
ALD(Atomic layer deposition)
ALDは「原子層堆積法」のことで、CVDの1種にも分類される。原子レベルでの制御が可能であるため、近年注目が集まる。
熱酸化法
ウエハを配置した高温の容器に酸素ガスを注入することで、表面を酸化させる。
スパッタリング
ターゲットとなる材料を高エネルギーイオンで照射し、表面の原子を吹き飛ばす形で成膜する。他の方法だと作ることの難しい金属膜の生成などで用いられる。
成膜装置の市場と有力メーカー
半導体業界全体が成長を続けており、成膜装置市場もそれに伴い成長を続けています。また、半導体デバイスの製造に求められる技術的ハードルも日々高くなってきており、成膜技術向上に向けて各社が競い合っている状況にあります。
主要なプレーヤーとして以下のメーカーが挙げられます。
- アプライドマテリアルズ
- 東京エレクトロン
- ラムリサーチ
- 日立国際電気
- Aixtron
- ASM
- ADEKA
- Veeco
特に「ラムリサーチ」「東京エレクトロン」「アプライドマテリアルズ」の3者は同市場において優位な立場にあり、大きなシェアを獲得しています。
ラムリサーチについて
ラムリサーチは、半導体製造装置の開発と製造における世界的なリーダーです。アメリカで設立され、現在は世界中に拠点を置いて活動をしています。主力製品には、成膜装置のほか、半導体製造のプロセスで使用されるエッチング装置、洗浄装置なども挙げられます。
東京エレクトロンについて
東京エレクトロンは、半導体製造装置の開発、製造、販売を行う日本の大手企業です。成膜装置のほか、エッチング装置やリソグラフィー装置などの半導体製造装置も取り扱いがあります。成膜装置においては世界シェアもトップクラスであり、世界から同社の成膜装置は高い評価を受けています。同社により提供されている成膜装置は次の通りです。
TELINDY PLUS™ (熱酸化装置) |
300mmウエハに対応した、バッチ式の熱処理装置。良質な成膜を実現しつつ、量産性にも優れた装置 |
NT333™ (ALD装置) |
東京エレクトロンでは初となる300mmウエハ対応の、セミバッチ式成膜装置。独自の成膜技術を用いて膜厚制御や高アスペクト内の膜質均質性を実現する。 |
Triase+™ Ti/TiN (CVD装置) |
300mmウエハ対応の枚葉式CVD装置。こちらも量産性に優れ、高い信頼性も持つ。高いステップカバレッジでTi、TiN成膜が実現可能。 |
出典:東京エレクトロン(https://www.tel.co.jp/product/index.html)
アプライドマテリアルズについて
アプライドマテリアルズは、半導体製造装置を製造するアメリカの企業です。同社も半導体製造装置の分野で世界をリードする企業であり、成膜装置の分野では特に高いシェアを誇っています。
アプライドマテリアルズの2021年における売上高は193億ドルで、そのうち成膜装置の売上高は64億ドルを占めています。市場シェアも40%ほどに上り、同社にとって成膜装置の存在感が強いだけでなく、成膜装置市場全体から見てもアプライドマテリアルズは大きな存在であるといえるでしょう。同社からは様々な成膜装置が提供されていますが、以下がその一例です。
Producer® HARP (CVD装置) |
オゾンを使用した、非プラズマベースによる絶縁膜成膜装置。プラズマを使うことによる損傷を避けられる。 |
Producer® Invia® CVD (CVD装置) |
電気的に優れた性能を持つ誘電体ライナーを生成できる。独自の成長プロセスで、耐圧とリーク電流の仕様が改良されている。 |
Centura® DxZ CVD (CVD装置) |
20µm以上の超厚酸化膜、180〜350℃の低温成膜、高い均一性などを実現し、最先端のパワーデバイス、MEMS、パッケージング市場におけるニーズに応える装置。 |
出典:アプライドマテリアルズ(https://www.appliedmaterials.com/jp/ja/semiconductor/semiconductor-products.html)
まとめ
半導体製造に関わる成膜装置は、昨今のエレクトロニクス業界全体において欠かすことのできない存在です。最近の市場動向については、技術進化によるシェア争いが厳しさを増していますが、市場全体としては成長の傾向にあります。日本メーカーの装置販売額も、今後拡大を続ける見通しがあります。また、日本では国内産業基盤の強靱化が進められており、今後開発拠点・生産拠点が新たに設けられることも期待できるでしょう。
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