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国内外のパワー半導体市場と産業政策、デジタルインフラのグリーン化と経済成長について

半導体は、5GやAI、IoT、ビッグデータ、スマートシティ、DXといった新たなデジタル社会の基盤となる存在です。そのため半導体市場はこれからも市場を伸ばすと予測されていますし、また、安全保障にも直結することから各国が大規模な産業政策を展開しています。

そこでこの記事では、半導体のうち特にパワー半導体に着目し、市場動向や産業政策に関して解説していきます。

 

パワー半導体の実情

パワー半導体は、産業機器、自動車や鉄道、電力、家電などの制御に使用されており、生活に密接に関わるデバイスです。使用電力容量で分けると、利用場面は大きく以下のように分類できます。

  • 小容量帯:データセンター用電源やルームエアコンなど
  • 中容量帯:自動車の電動化、業務用エアコン、産業用ロボット、汎用インバータなど
  • 大容量帯:再生可能エネルギー等の電力系統(風力発電、太陽光発電等)や電鉄を活かした発電など 

いずれもデジタル化社会への移行に伴い需要が増加すると予想されています。ただ、近年はカーボンニュートラルに向けた取り組みが進められており、これらの省電力化技術が非常に重要になってきています。

 

次世代パワー半導体市場の動向

パワー半導体の市場規模は拡大しています。この傾向は国内に限りません。現時点では3兆円ほどとされていますが、2030年には5兆円、さらに2050年には10兆円の市場になるとも見込まれています。

 

また、今後の動向としては素材の移行も起こるとされています。現状、多くの電気機器にはSi(シリコン)が採用されているところ、次世代パワー半導体素材も研究開発が進められており、省エネ性能等に優れるSiC(シリコンカーバイド)GaN(窒化ガリウム)などの市場規模が拡大するという見通しです。

なお、SiCGaNSiに比べて耐圧性能や高速性、熱伝導も優れていますが、価格面で今のところ難があります。他にも課題は残されていますが、今後素材の置き換えも進んでいくことでしょう。例えばGaNはサーバー内の電圧変換機やデータセンターの電源など、SiCに関しては電動車・充電インフラなどでの需要が拡大していくとされています。

 

パワー半導体の高性能化が求められている

上のように、パワー半導体も新たな素材が採用され始めるなど、大きな変化が起こりつつあります。というのも、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという目標を達成する必要があるからです。パワー半導体の活用場面は幅広く、これを性能アップさせることがCO2排出削減に大きく寄与することからSiCGaNといった素材の実用化が政策としても進められています。

 

グリーン化の必要性と経済成長

デジタルインフラの消費電力量は2030年にかけて加速的に増加していく予測がされており、大規模なAI訓練でも大きなCO2排出が生じると見込まれています。さらにIoTデバイスの需要も増加することで、データ処理に要する電力消費量も増大してしまいます。

しかし、こうした需要の拡大自体は、経済成長という観点では悪いものではありません。それにもかかわらずグリーン化にだけ着目して推し進め、電力消費の制約をかけてしまうと、機会損失が多く生まれてしまうでしょう。そこで国家はグリーン化成長戦略を掲げ、CO2等の排出を削減しつつ経済成長も進めていくと示しています。

 

次世代パワー半導体の国際的状況

日本以外でも次世代パワー半導体に関する施策が進められています。以下でその内容や国際的な競争について見ていきましょう。

 

次世代パワー半導体に関する他国の施策

具体的なユースケースを指定した事業から省エネ実証、実証に向けた支援などが行われています。さらにパイロットラインの構築も実施され、ユースケースの開発を促進するようなプロジェクトも中には存在しています。例えばアメリカではSiC製造プロセスや人材育成などが2016年から進められていますし、8インチSiCについては2019年から、その他GaN基盤やデバイス、GaBイオン注入、GaNゲート絶縁膜に関する政策が数年前から本格的に進んでいます。数十億円単位から500億円もの支援が行われています。

欧州ではSiCによる省エネ実証、GaNデバイスの低コスト化に向けた支援が2021年から3年単位で実施。中国でも2019年からSiCGaN、その他半導体に関する施策が採られ、3兆円もの規模で支援が進められています。

日本でもこれまでSiCGaNの基盤技術や応用、実用化に向けた取り組むが経済産業省などにより行われてきましたが、2020年からは環境省によりGaNパワーコンディショナー、文科省によりGaN on GaNや受動部品開発に関する支援が開始されています。

 

次世代パワー半導体に関する国際競争

次世代パワー半導体についてはまだ投資競争の要素が少ないとされ、Siパワー半導体とは国際競争における勢力図が異なっています。またSiに比べると市場規模が10分の1以下であり、今後急成長していくとされています。そのため、2030年にかけて拡大する需要に向けて技術開発・コスト削減を推進し、シェアの拡大を図ることが重要と考えられています。 

なお、ウェハは安定供給、コストの面でも重要な要素とされ、次世代パワー半導体のシェアを拡大していくためには国内ウェハ産業の強化も重要度が高いとみられています。

 

まとめ

次世代パワー半導体を含む、パワー半導体市場について現状や今後の見込みなどを解説しました。カーボンニュートラルの達成など、パワー半導体の性能向上が求められるようになり、世界中でSiCGaNといった素材の実用化が進められています。Siに比べるとまだまだ市場規模は大きくありませんが、SiCGaNパワー半導体のシェア獲得・拡大が国際的な競争力を高めるためには欠かせません。

 

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