Armとは?マイクロプロセッサーの設計を行うイギリスのファブレスメーカーを紹介
スマホやタブレット、IoTデバイスなど、現代社会を支えるデバイスの心臓にあたるのがマイクロプロセッサーです。その設計を担う企業として世界的に知られるのがイギリスの「Arm」です。Armのチップ設計は、省エネ性の高さなどから多くのデバイスに採用され、半導体産業にとどまらず様々な産業に対する影響力も持っています。当記事ではこのArmについて注目し、企業の概要から主要分野・主要製品などを紹介していきます。
Armの概要
「Arm」とはイギリスの半導体企業であり、主にマイクロプロセッサーの設計や開発を手がけています。特に低電力消費を特長とする「ARMアーキテクチャ」が世界的に有名であり、そのライセンスを世界の半導体メーカーに提供しています。そのため「IPベンダー」であるという説明がなされることもあります。このIPとは「Intellectual Property」、つまり知的財産のことです。
自社で半導体製造を行うわけではなくCPUの回路構成やアーキテクチャ等を供与しており、知的財産の提供までが同社の主な活動内容となります。同社の設計をもとに他社が製品を作っているのですが、例としてAppleのAシリーズチップ、サムスンのExynosシリーズ、クアルコムのSnapdragonシリーズなどが挙げられます。スマホやタブレット等で広く採用されているプロセッサーの多くは、Armの設計をもとに作られているのです。
ARMアーキテクチャについて
「ARMアーキテクチャ」は、マイクロプロセッサーの設計仕様のことです。低消費電力と高性能の両立を実現する設計が特徴であり、スマホ・タブレット・ウェアラブルデバイスなど、モバイルデバイスで幅広く用いられています。さらに、サーバーやクラウドコンピューティングなど、モバイルデバイス以外の分野にも採用は拡大しています。
ARMアーキテクチャの始まりは、1980年代に遡ります。「ARM1アーキテクチャ」がスタート地点であり、この時点から低消費電力と高性能の両立を特長としています。その後ARM2、ARM3・・・と次々に改良が続き、現代においては世界でもっとも広く使われているマイクロプロセッサーの設計仕様になっています。
Armが取り組む主な事業分野
Armが取り組む主な分野を以下に整理します。
分野 |
内容 |
オートモーティブ |
自動車向けのマイクロプロセッサーを開発・提供。電気自動車や自動運転車など、新しい自動車技術に採用されている。 |
インフラストラクチャ |
データセンターやネットワーク機器向けのマイクロプロセッサーを開発・提供。データセンターの集積化、ネットワークの高速化に貢献する。 |
コンシューマ向け技術 |
スマホやタブレット、ウェアラブルデバイスなど、コンシューマ向けデバイスのマイクロプロセッサーを開発・提供。これらデバイスの普及に大きく貢献している。 |
IoT |
IoTデバイス向けのマイクロプロセッサーを開発・提供。IoTデバイスの普及にも貢献する。 |
Armはこれらの分野において独自のマイクロプロセッサーアーキテクチャをベースに、革新的な技術の開発・提供に取り組んでいます。
Armの主な製品
次に、Armから提供される主な製品をいかに整理します。
製品 |
内容 |
プロセッサーIP |
プロセッサーIPの代表的なプロバイダーとして、幅広くコアを提供する。多様なデバイスの消費電力・コスト・性能要件に対応している。「Cortex-A」「Cortex-M」「Cortex-R」「Neoverse」「Ethos」「SecurCore」などがある。 |
セキュリティIP |
デバイスを保護する強力なセキュリティ機能を提供している。「TrustZone」はデバイスを複数のゾーンに分割してそれぞれに異なるセキュリティポリシーを適用する技術。「SecurCore」は高セキュリティが要求されるアプリケーション向けのマイクロプロセッサー。「Cortex-M35P」はArm Cortex-Mシリーズのマイクロプロセッサーでありセキュリティ機能が強化されている。 |
システムIP |
デバイスの機能を強化するための各種IPを提供する。CryptoCellは暗号化機能を提供するIP。コアサイトはデバイスの機能を拡張するためのIP。コヒーレントメッシュネットワークは複数のCPUを接続するためのIP。AMBAはARMアーキテクチャベースにおけるデバイス間の通信を制御するためのIP。 |
グラフィック/マルチメディア |
デバイスに高性能なグラフィックとマルチメディア機能を提供する。「Arm Immortalis / Mali GPU」はハイエンドグラフィックを実現するGPUで、「Mali Cameraシリーズ」は高性能なカメラISPを搭載したGPU。 |
ソフトウェア/開発ツール |
各種ソフトウェア、開発ツールも提供する。OS、開発者向けの環境、ARMアーキテクチャにコンパイルするためのツール、デバッガーなどがある。 |
Armの製品は、一般消費者向けのデバイスから、自動車、IoT、データセンターなどのインフラまで、とても広い分野に提供されており、社会生活をより便利にする役割を担っています。
まとめ
Armは革新的なチップ設計で半導体業界をリードする存在であり、またその事業は多角化が進んでいます。オートモーティブ、インフラ、一般消費者向けの技術、IoTにまで取り組んでおり、デジタル社会を豊かにする技術の開発を進めています。多様な製品群とともに今後もArmはテクノロジーを創出し続けることでしょう。
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